日経平均株価~ここまでの下げは調整の範囲内
市川レポート(No.512)日経平均株価~ここまでの下げは調整の範囲内
- 日経平均は先週、一時23,000円台を回復したがその後反落、ただしこの下げは調整の範囲内。
- 23,000円台回復はEPSではなくPER上昇によるもの、株反落で期待先行の株高は適切に修正。
- 日経平均のEPS上昇は次の決算待ち、株価はそれまで各種材料の思惑主導で振れやすい展開。
日経平均は先週、一時23,000円台を回復したがその後反落、ただしこの下げは調整の範囲内
日経平均株価は先週5月21日、取引時間中に23,050円39銭の高値をつけ、終値ベースでも23,000円台を回復しました。株価上昇の背景にあったのは、米中貿易摩擦問題に対する懸念の後退や、ドル高・円安の進行です。貿易戦争リスクが後退したことで、日本株に買い安心感が広がり、また、相場がドル高・円安に振れたことで、業績予想の上方修正期待が高まりました。
しかしながら、日経平均株価は23,000円台回復の達成感から、その後は売りに押される展開となりました。また、先週は米長期金利の低下とともに、為替市場でドル安・円高の動きが顕著となり、これも株価を押し下げる要因になったと考えられます。その結果、日経平均株価は5月25日の取引時間中に、22,318円15銭の安値をつけました。しかしながら、この下げは調整の範囲内と思われます。
23,000円台回復はEPSではなくPER上昇によるもの、株反落で期待先行の株高は適切に修正
日経平均株価の予想1株当たり利益(EPS)について、5月10日から5月28日までの推移をみると、1,640円~1,670円台で、比較的落ち着いていることが分かります(図表1)。この数字は、3月決算企業が決算発表で公表した、今期の利益予想を反映しています。一方、株価収益率(PER)の動きを確認すると、5月10日は13.56倍でしたが、日経平均株価が23,000円台を回復した5月21日に向けて、14倍付近まで上昇しています。
つまり、日経平均株価の23,000円台の回復は、増益予想(EPSの上昇)によるものではなく、期待先行(PERの上昇)によるもので、上値余地は限られます。5月28日時点で、日経平均株価は22,400円台まで下げていますが、EPSがほぼ変わらないまま、PERが13.5倍まで戻っていますので、期待先行の株高は適切に修正されたと解釈できます。したがって、ここまでの日経平均株価の下げは、調整の範囲内といえます。
日経平均のEPS上昇は次の決算待ち、株価はそれまで各種材料の思惑主導で振れやすい展開
なお、最近の株価の動きは、先物取引の影響も大きいと思われます。4月第1週から5月第3週まで、海外投資家による日経225先物の買いがみられます(図表2)。前述の通り、この期間におけるドル高・円安の進行が先物の買い材料になり、先物買いに伴う裁定買いが、現物を押し上げた可能性があります。ただ、その後、為替がドル安・円高に振れたため、海外投資家が先物の売りに転じ、裁定解消による現物売りが出回ったと推測されます。
日経平均株価が増益予想(EPSの上昇)を伴って上昇するには、企業が決算発表(4-6月期決算は7月下旬から8月上旬頃、中間決算は10月下旬から11月上旬頃)で、実際に業績予想を上方修正する必要があります。それまでの間、日経平均株価は、米中貿易摩擦問題、北朝鮮情勢、欧州政治動向などをにらみつつ、ドル円相場の影響も受けながら、思惑主導で振れやすい展開が予想されます。
(2018年5月29日)
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