バリュー株とグロース株

市川レポート(No.411)バリュー株とグロース株

  • バリュー株は企業の実態より株価が割安な銘柄群、グロース株は高い成長が見込まれる銘柄群。
  • TOPIXバリュー指数とグロース指数のパフォーマンスを長期でみると、後者が前者を上回る結果に。
  • グロース株の相対的優位性を高めている要因は、超低金利環境や情報技術革新である可能性。

 

バリュー株は企業の実態より株価が割安な銘柄群、グロース株は高い成長が見込まれる銘柄群

米国の株式市場では、1970年代初め頃より「類似の特徴を持つ銘柄は、類似したパフォーマンスを示す」という認識から、「株式投資スタイル」の考え方が広まりました。株式投資スタイルは、一般に企業の規模や成長性に基づいて分類され、代表的な例が、「大型株」と「小型株」、「割安(バリュー)株」と「成長(グロース)株」です。

前者は時価総額の大小によって分類され、後者は株価純資産倍率(PBR、1株当たりの純資産に対し、株価が何倍まで買われているかを表す指標)や、株価収益率(PER、1株当たりの利益に対し、株価が何倍まで買われているかを表す指標)などの基準指標を用いて分類されます。一般に、バリュー株は企業の実態(ファンダメンタルズ)に比べ株価が割安な銘柄群、グロース株は平均よりも高い成長が見込まれる銘柄群とされます。

 

TOPIXバリュー指数とグロース指数のパフォーマンスを長期でみると、後者が前者を上回る結果に

ここで、バリュー株とグロース株について、過去の値動きを確認してみます。東京証券取引所が算出する東証株価指数(TOPIX)バリュー指数とグロース指数は、いずれも基準日は2008年11月25日で、基準値は1,000ポイントです。2017年6月28日時点の終値は、それぞれ1,836.47ポイント、2,052.68ポイントでしたので、この期間の騰落率はTOPIXバリュー指数が+83.6%、TOPIXグロース指数は+105.3%です。

なお、同期間におけるTOPIXの騰落率は+94.1%でしたので、パフォーマンスの良い順に並べると、TOPIXグロース指数、TOPIX、TOPIXバリュー指数となります。株式投資では、PBRやPERの低い銘柄群の収益率は、高い銘柄群を上回る傾向があるといわれます(低PBR効果や低PER効果)。ただ、この結果からは、そのような効率的市場仮説では説明のつかない変則性(アノマリー)は、一見ないように思われます。

 

グロース株の相対的優位性を高めている要因は、超低金利環境や情報技術革新である可能性

そこで次に、TOPIXバリュー指数とグロース指数について、2010年から2016年までの年間騰落率を比較します。その結果、TOPIXバリュー指数のパフォーマンスがTOPIXグロース指数を上回ったのは、2010年と2016年のみとなり、それ以外は全て、TOPIXグロース指数のパフォーマンスがTOPIXバリュー指数を上回りました(図表1)。年間の騰落率をみても、改めてグロース株の優位性が確認できます。

その理由について以下、考えてみます。前述の2008年11月25日から2017年6月28日までの期間における、銀行業と情報・通信業の騰落率は、それぞれ+21.5%、+160.4%でした(図表2)。銀行業は長期にわたる超低金利環境が、情報・通信業はスマートフォンなどの技術革新が、それぞれの業績と株価に影響を及ぼしたと思われます。一般に、銀行業はバリュー銘柄、情報・通信業はグロース銘柄とされます。したがって、金融環境や技術革新が、グロース株の相対的な優位性を高めている可能性があると考えられます。

 

170628図表1170628図表2

 

(2017年6月28日)

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