先週の重要イベントを経て見えてきたこと
市川レポート(No.368)先週の重要イベントを経て見えてきたこと
- 先週は米長期金利の低下とドル安が進んだものの、重要イベントが市場に与えた影響は限定的。
- 市場は依然、米利上げペースやトランプ政策の実効性など、米国の要因に左右されやすいとみる。
- 基本的には緩やかな利上げペース継続とトランプ政策の進展を見込むが、相場変動リスクは残る。
先週は米長期金利の低下とドル安が進んだものの、重要イベントが市場に与えた影響は限定的
先週は米連邦公開市場委員会(FOMC)など、重要イベントが目白押しでしたが、いずれも波乱なく終了しました。最も注目されたFOMCでは、市場の予想通り利上げが決定されたものの、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見などから、改めて緩やかなペースでの利上げ継続が確認されました。そのため週間ベースでは、米長期金利の低下やドル安の動きがやや目立ちました。
また20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明について、為替に関する文言に変更はありませんでしたが、「保護主義に対抗する」という文言が削除され、更に温暖化対策に関する記述も削除されるなど、米国に配慮した様子が窺えます。ただ市場が警戒するのは、今回の共同声明ではなく、今後次第に具体化される米国の通商政策と思われます。
市場は依然、米利上げペースやトランプ政策の実効性など、米国の要因に左右されやすいとみる
結局、一連の重要イベントが市場に与えた影響は限定的でしたが、週が明けて3月21日のニューヨーク市場では、米国株が大幅安となり、米長期金利が低下、ドルが対主要通貨で下落するなど、リスクオフ(回避)の動きが強まりました。背景にあるのは、米議会で医療保険制度改革法(オバマケア)廃止と代替案への置き換えに関する法案審議が難航するという懸念です。
トランプ政権はオバマケア撤廃を最優先事項としているため、関連法案の成立が遅れた場合は、税制改革や景気対策も遅れるとの思惑から、トランプ政策に対する市場の期待は剥落しやすくなります。実際、翌3月22日の東京市場でも、株安と長期金利の低下、そしてドル安・円高が進行しました(図表1)。これらを勘案すると、市場は依然として米利上げペースやトランプ政策の実効性など米国要因に左右されやすいと思われます。
基本的には緩やかな利上げペース継続とトランプ政策の進展を見込むが、相場変動リスクは残る
米下院では、3月23日にオバマケア廃止と代替案への置き換えに関する法案の採決が行われますが、共和党保守派が法案に反対しており、下院での承認は難しいとみられます。下院で承認されなかった場合は、法案を修正するなどして両院を通過させ、17年度暫定予算の期限である4月28日までに法案を成立させる必要があります(図表2)。税制改革はこの次の議論となるため、オバマケア代替法案の行方に市場の関心が集まっています。
また3月23日はイエレン議長の講演も予定されており、この日は米利上げペースやトランプ政策の実効性に関する材料が重なります。基本的には、緩やかなペースでの米利上げ継続、4月にオバマケア代替法案成立、5月にトランプ政権の予算教書提出と議会での予算審議開始という展開を見込んでいますが、政策スケジュールが遅延すれば、市場が一時的にリスクオフの動きを強める恐れもあり、注意が必要です。
(2017年3月23日)
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