ドル円相場の見通しを更新

市川レポート(No.349)ドル円相場の見通しを更新

  • 2017年の予想レンジを従来の1ドル=112円~122円から1ドル=108円~118円へ修正する。
  • 日米首脳会談が無事終了ならいったんドル高・円安も、米予算教書などを控え値幅は限定的に。
  • 財政支出が中立規模ならドル円は春先に円高の可能性、ただ着実な財政執行はドル高を支援。

2017年の予想レンジを従来の1ドル=112円~122円から1ドル=108円~118円へ修正する

弊社は2月7日付けでドル円相場の見通しを更新し、2017年の年間レンジについて、従来の1ドル=112円~122円から1ドル=108円~118円へ修正しました。トランプ米大統領が就任以降、為替を含む通商政策で強気の姿勢を示している一方、依然として経済政策の概要が明らかになっていないことなどを勘案し、やや円高方向のリスクを見通しに反映させました。

ただ米国経済に対する基本的な見方は変えておらず、2017年は2回の利上げと2.4%程度の底堅い成長を見込んでいます。ここ3カ月程のドル円相場の動きを振り返ると、ドル円は米大統領選挙後の2016年11月9日に101円20銭水準をつけた後、トランプ政策への「期待」から大幅なドル高・円安が進行し、2016年12月15日には118円66銭水準に達しました。ただ年明け以降は「期待」が一服し、緩やかなドル安・円高が進行しています。

日米首脳会談が無事終了ならいったんドル高・円安も、米予算教書などを控え値幅は限定的

2016年11月から直近までのドル円の動きをフィボナッチ・リトレースメントで示したものが図表1です。トランプ政策への「期待」の変化をフィボナッチ・リトレースメントに当てはめると次のように解釈できます。すなわち「期待」が半減すれば50%押しの109円93銭近辺(約110円)、さらに後退すれば61.8%押しの107円87銭(約108円)というように、「期待」の後退度合いに応じてドル安・円高が進むとみることができます。

目先の重要イベントは2月10日の日米首脳会談ですが、2月7日付レポート「日米首脳会談の注目ポイント」でお話しした通り、米国が為替相場に言及する必要性は低いと思われます。会談が波乱なく終了し、相場がドル高・円安に振れる展開も期待されますが、2月28日にトランプ米大統領の米上下両院合同本会議での演説が控えており、また3月には予算教書が予定されているため、ドル高・円安の動きは限定的になると思われます。

財政支出が中立規模ならドル円は春先に円高の可能性、ただ着実な財政執行はドル高を支援

米議会はトランプ米大統領の予算教書を受けて予算作成に着手します。トランプ米大統領は10年間で6兆ドルの減税と1兆ドルのインフラ投資を公約としていますが、米議会は財政支出を中立的な規模に抑制し、減税は10年間で2.4兆ドル、インフラ投資は5年間で2,750億ドルにとどまると予想します。米議会の予算案は3月から4月頃には明らかになると思われ、政策「期待」の後退につながればドル円は108円に近づく可能性があります。

ただ中立規模の財政支出でも今年後半から来年前半にかけて米国の経済成長率を0.8%ポイント程度押し上げると推計されます。そのためドル円は春先いったんドル安・円高に振れたとしても、財政政策と年2回の利上げが着実に実行される限りは、年末に向けて緩やかなドル高・円安に転じることが期待されます。一方、米国は過度なドル高は牽制すると思われるため、年内のドル円は118円が上値の目安と考えます。

 

170208図表1

 (2017年2月8日)

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