日本株が持続的に上昇するための要件

市川レポート(No.308)日本株が持続的に上昇するための要件

  • 海外要因だけでは日経平均押し上げに力不足、持続的な上昇には日本独自の好材料が必要。
  • 10月下旬からの中間決算に注目、円高は利益減少要因だが、株価にはある程度織り込み済み。
  • 11月以降は海外投資家が中間決算でのあく抜けなどを見極め、日本市場に戻るか否かが焦点。

海外要因だけでは日経平均押し上げに力不足、持続的な上昇には日本独自の好材料が必要

日経平均株価は10月11日、約1カ月ぶりに17,000円台を回復しました。ただこの株高は海外要因によるところが大きかったと考えます。具体的には、10月7日に発表された米国の9月雇用統計や、10月10日に行われた米大統領候補による第2回テレビ討論会が、ともに大きな波乱材料にならなかったことです。これが欧米株の上昇につながり、原油高やドル高・円安の動きも加わって、日本株に買い安心感が広がったものと推測します。

しかし米国の雇用指標や討論会が波乱なく終わったというだけでは、日経平均株価の更なる押し上げには力不足です。実際、米国で7-9月期の決算シーズンが始まった10月11日、米アルミ大手アルコア(※)の利益が予想に届かなかったことなどが嫌気され、ダウ工業株30種平均は前日比で200ドル超下落し、翌12日の日経平均株価は17,000円割れで寄り付きました。日経平均株価の持続的な上昇には、やはり日本独自の好材料が必要です。

10月下旬からの中間決算に注目、円高は利益減少要因だが、株価にはある程度織り込み済み

日本独自の材料という点では、10月下旬から始まる2017年3月期決算企業の中間決算が注目されます。4-6月期決算では、円高進行により製造業の経常利益の減益が目立ちましたが、中間決算でも円高の影響は焦点の1つです。9月の日銀短観によれば、大企業・製造業の想定為替レートは、2016年度上期が1ドル=108円44銭、下期が1ドル=107円42銭となっています。

足元のドル円レートは概ね1ドル=103円台で推移していますので、想定為替レートとの乖離は、企業利益の減少要因となります。実際のリビジョン・インデックスをみても、依然としてマイナス圏にあり、業績見通しを下方修正する企業の割合が多いことを示唆しています(図表1)。ただドル円レートは6月以降、すでに99円台を何度かつけていることもあり、ある程度の業績下方修正は株価に織り込まれている可能性があります。

11月以降は海外投資家が中間決算でのあく抜けなどを見極め、日本市場に戻るか否かが焦点

中間決算において、企業の業績見通しの下方修正が株価の織り込み範囲内であれば、業績に対する懸念は徐々に薄れる可能性があります。なお中間決算のヤマ場はちょうど11月8日の米大統領選挙頃に迎える見通しです。米大統領選挙が波乱なく終了すれば、リスク回避の後退で為替はドル高・円安方向の動きが予想されます。そのタイミングで日本企業の業績にあく抜け感が出れば、日経平均株価の17,000円台定着も期待されます。

ただし、その後の上昇度合いについては、海外投資家動向がカギを握ると考えます。投資部門別株式売買状況をみると、海外投資家の大幅な売り越しが続いており(図表2)、これが日本株の重しとなってきました。そのため海外投資家が、米大統領選挙の波乱なき終了、円相場の安定、中間決算でのあく抜け、これらの実現を見極め、日本株市場に戻ってくるか否かが11月以降の注目点と考えます。

※ 個別銘柄に言及していますが、当該銘柄の推奨を目的とするものではありません。

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 (2016年10月12日)

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