日米経済指標が示唆する相場の方向性

市川レポート(No.231)日米経済指標が示唆する相場の方向性

  • 3月短観では企業全体で景況感悪化と物価見通しの下振れが確認され、日本株は下げ幅拡大。
  • 一方米国では雇用の持続的改善と製造業の持ち直しが確認され、景気悲観論は一段と後退へ。
  • 日本株は政策期待が下支えに、また為替相場はリスクオフでの円全面高にはなりにくいと考える。

3月短観では企業全体で景況感悪化と物価見通しの下振れが確認され、日本株は下げ幅拡大

4月1日に発表された3月の全国企業短期経済観測調査(短観)は総じて市場予想を下回るさえない結果となりました。全産業、全規模でみた最近の業況判断DIはプラス7と前回12月調査から2ポイント悪化し、先行きのDIもプラス1と足元から6ポイントの悪化が示されました。企業全体で景況感が悪化したことが嫌気され、同日の日経平均株価は一時600円を超える下げ幅となりました。

また大企業製造業の2016年度事業計画では、想定為替レートが1ドル=117円46銭で、経常利益は前年度比1.9%減との見通しが示されました。ただ短観発表時、ドル円の実勢レートは112円台と想定レートよりも円高水準であったため、経常利益は更に減少するとの懸念が市場で強まり、株価の下げ幅拡大につながりました。また4日発表の物価調査では、物価全般の見通しが全産業、全規模で前回12月調査から明確に下振れました(図表1)。

一方米国では雇用の持続的改善と製造業の持ち直しが確認され、景気悲観論は一段と後退へ

米国の経済指標は日本に比べ、おおむね良好なものとなりました。4月1日に発表された3月の雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比21万5千人増と、ほぼ市場予想通りの結果となりました。失業率は5.0%と前月の4.9%から悪化しましたが、これは労働参加率の63.0%への回復にみられるように、今まで職探しをあきらめていた人々が職探しを再開したことによるものと考えられ、それほど懸念する必要はありません。

また同日に発表された3月の米ISM製造業景況感指数は51.8となり、2月の49.5から改善しました。製造業景気の拡大・縮小の境目である50を明確に上回るのは、昨年8月以来となります。また指数の構成項目をみると、新規受注が51.5 から58.3へ、生産も52.8 から55.3 へ、それぞれ大幅に上昇しています。このように雇用の持続的な改善と製造業の持ち直しが確認されたことで、米景気の悲観論は一段と後退したと思われます。

日本株は政策期待が下支えに、また為替相場はリスクオフでの円全面高にはなりにくいと考える

以上の日米経済指標を踏まえ、日本株と円相場の方向性を考えます。短観の結果は、日銀の早期追加緩和の可能性を高める内容となりました。追加緩和の時期は6月とみていますが、企業の物価見通しが下振れており、4月のシナリオも完全には否定できなくなっています。安倍政権内でも短観後に財政出動を求める声が上がっており、金融・財政の政策期待が日本株を支えると思われ、年初来安値を一気に試す展開にはならないと予想します。

ただ日本株の反転上昇には、海外投資家が日本の物価上昇や景気回復を強く確信できるような政策の中身が求められますので、今しばらく政府・日銀の動きを見極める必要があると思われます。なお為替については、4月1日の米経済指標を受けても利上げ観測はそれほど高まらず、ドルは円やスイスフランなどに対し下落しました。ドル全面安の相場は、3月のようにリスクオンを促しやすいため、リスクオフでの円全面高にはなりにくいと考えます。

160404 図表1160404 図表2

 

 (2016年4月4日)

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