G20後の日本株
市川レポート(No.217)G20後の日本株
- G20は世界経済の成長のため、金融・財政・構造政策の全ての政策手段を用いることを表明。
- 市場変動は経済の実態を反映しておらず、為替や資本移動の動きを協議し監視すると明言。
- 今後は各国が打ち出す具体的な政策が焦点、日本株は振れ幅を伴いつつ底固めの可能性も。
G20は世界経済の成長のため、金融・財政・構造政策の全ての政策手段を用いることを表明
2月26日、27日に中国・上海で20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開催されました。世界の金融市場は、中国の景気減速などを背景に年初から不安定な動きが続いていました。そのためG20で市場安定のために踏み込んだ協調方針が示されれば、相場のセンチメントが改善するきっかけとなる可能性もあり、今回の会合は早くから注目されていました。
2月27日にまとめられた共同声明では、世界経済について、回復は続いているものの期待水準には達しておらず、見通しの更なる下方修正リスクが増大しているとの認識が示されました。そして世界経済の成長という目的を達成するため更なる行動が必要とし、①金融政策、②財政政策、③構造政策という全ての政策手段を、個別にまた総合的に用いることを表明しました。
市場変動は経済の実態を反映しておらず、為替や資本移動の動きを協議し監視すると明言
また声明では、最近の金融市場の変動は、世界経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映したものではないとの見方が示されました。更に為替市場については、過度の変動や無秩序な動きは経済及び金融の安定に対して悪影響を与えうるとし、為替市場に関して緊密に協議するとの文言が盛り込まれました。そして資本移動については、よりよく監視することが明記されました。
構造改革は、早急な進展が経済をより強靭にするとし、国ごとの進捗を評価・監視する指標を作成するとしました。以上の諸点から、全ての政策手段を用いて世界経済の成長に努め、為替市場や資本移動の動きを緊密に協議し監視するという、G20の強い姿勢が窺えます。しかしこれは直ちに協調介入や協調緩和を意味するものではなく、現時点で具体策は各国に委ねられていると思われます。つまりそこまで世界経済や金融市場は悪化していないというG20の判断と解釈することもできます。
今後は各国が打ち出す具体的な政策が焦点、日本株は振れ幅を伴いつつ底固めの可能性も
今回のG20共同声明は、少なくとも市場の失望を誘うものではなく、ある程度前向きに受け止められると思われます。日経平均株価は2月中旬以降、16,000円を挟んで方向感のない動きが続いていますが(図表1)、このところ上海株や人民元の変動にも比較的冷静な反応がみられます。引き続き原油相場や円相場の動向には注意が必要ですが、日経平均株価は上下に振れながらも底固めに向かう可能性が幾分高まったとみています。
G20後の相場の焦点は、各国が具体的にどのような政策を打ち出すかに移っていきます(図表2)。例えば中国が全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で財政拡大の姿勢を示し、欧州中央銀行(ECB)が市場を納得させるに十分な規模で追加緩和を行い、米連邦準備制度理事会(FRB)がハト派的なメッセージを発信した場合、市場は安定に向かうことが予想されます。それでも円高と株安が一段と進行した際には、政府・日銀は追加緩和や円売り介入、補正予算の編成による景気対策など、想定しうる政策手段を用いて対処すると思われます。
(2016年2月29日)
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