10月FOMCのポイントと今後の展望
市川レポート(No.166)10月FOMCのポイントと今後の展望
- FOMC声明では景気の総括判断を維持し、海外情勢のリスクに関する表記を大幅に変更。
- 敢えて「次の会合」という表現を使い、12月会合における利上げの可能性を残した。
- 今しばらくは米利上げ時期を巡る不透明感が残り、相場のあく抜けには至らないとみる。
FOMC声明では景気の総括判断を維持し、海外情勢のリスクに関する表記を大幅に変更
米連邦準備制度理事会(FRB)は10月27日、28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策の維持を決定しました。注目のFOMC声明では、景気の現状判断について、家計支出と設備投資の判断が上方修正された一方、労働市場の判断は下方修正されました(図表1)。ただ「ならしてみると労働資源の未活用の状況は年初以降改善している」とし、「経済活動は緩やかなペースで拡大してきている」との総括に変更はありませんでした。
また前回新たに追記された、最近の世界経済・金融情勢は経済活動をやや抑制し、短期的に物価の下押し圧力となる可能性が高い旨の表記は今回削除され、「海外の情勢を注視している」は「世界の経済・金融の進展を注視している」に変更されました。またフォワードガイダンスで示される利上げの2条件(労働市場がさらに幾分改善すること、物価上昇率が中期的に2%の目標に戻っていくと合理的に確信できること)は維持されました。
敢えて「次の会合」という表現を使い、12月会合における利上げの可能性を残した
なおFOMC声明の第3段落の文言にも注目が集まりました。すなわち前回の「目標レンジをどの程度の期間、維持するかの決定にあたっては」という表記が、今回は「次の会合(at its next meeting)で目標レンジの引き上げが適切かどうかの決定にあたっては」に変更されました。敢えて「次の会合」という表現が使われたことで、市場では12月15日、16日に開催されるFOMCで利上げが決定されるのではないかとの期待が高まりました。
確かに、景気の現状に関する総括判断が据え置かれ、海外情勢のリスク表記の削除で海外要因の落ち着きが示唆されるなか、「次の会合」という表現が新たに加わったことで、利上げが近いことを意識させる内容となっています。ただ第3段落をよく読むと、次の会合で「精査する」と述べるにとどまっており、結局、利上げは会合毎に検討するという従来のスタンスに何ら変わりないことが分かります。つまり「次の会合」は、利上げの織り込みを意図するものではなく、利上げの可能性を残すための表現と思われます。
今しばらくは米利上げ時期を巡る不透明感が残り、相場のあく抜けには至らないとみる
FOMC声明発表後、フェデラルファンド(FF)金利先物市場から算出される12月の利上げ確率は、前日の約35%から約46%へ上昇しました。こうしたなか、米国株はいったん売り先行(引けにかけて反発)、米長期金利は上昇で反応しました。また為替市場では米ドルが対主要通貨で上昇し、ドル円は一時121円台を回復しました。このように市場では米利上げ時期をやや前倒す動きが総じてみられました。
ただ今回のFOMCを経ても、米利上げ時期に関する市場の見通しは依然として明確に定まっておらず、やはりFRBの市場との対話には改善の余地があると思われます。前述の通り、12月の利上げは可能性として残されていますので、利上げの決定は今後の経済データ次第、そしてFRBが注視する世界の経済・金融の進展次第ということになります。そのため今しばらくは米利上げ時期を巡る不透明感が残り、相場のあく抜けには至らないと思われます。
(2015年10月29日)
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