日本株大幅高の背景と今後の見通し

市川レポート(No.164)日本株大幅高の背景と今後の見通し

  • 日銀とECBによる追加緩和期待が日本株大幅高の背景、中国利下げも株式市場の好材料。
  • 不確実性が残るなかでも日本株は下値を固めつつあり、相場の緩和依存度は極めて高い。
  • 決算などを無難に乗り切れば、年末にかけて日本株の戻り余地は広がるとの見方を維持。

日銀とECBによる追加緩和期待が日本株大幅高の背景、中国利下げも株式市場の好材料

 10月23日の日経平均株価は前日比389円43銭高の18,825円30銭で取引を終え、9月9日高値の18,770円51銭を終値ベースで回復しました(図表1)。背景には欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁発言の影響があると思われます。同総裁は10月22日、定例理事会後の記者会見において、「金融緩和の度合いを12月の理事会で精査する」と述べ、また預金ファシリティ金利の引き下げについて議論したことにも言及するなど、ハト派的な姿勢を強めました。

 これを受けて市場では日銀がECBと歩調を合わせ10月30日の金融政策決定会合で追加緩和に踏み切るとの思惑が浮上しました。為替市場では対米ドルでユーロ安、円安が進行し、日欧の追加緩和による流動性相場の拡大期待から、主要国の株価は堅調に推移しました。また23日に中国人民銀行(中央銀行)が銀行の貸出と預金の基準金利を0.25%引き下げ、同時に預金準備率も0.5%引き下げることを発表しましたが、これも欧米株式市場に追い風となりました。  

不確実性が残るなかでも日本株は下値を固めつつあり、相場の緩和依存度は極めて高い

 夏場の金融市場を大きく混乱させた米国の利上げ時期と中国の景気動向という2つの不確実性は完全に解消された訳ではありません。ただそれでも日本株は徐々に下値を固めつつあり、その動きを支えているのが、米早期利上げ観測の後退、日欧の追加緩和期待、中国の追加緩和実施です。やはり株式市場は流動性相場の長期化によって、緩和依存度が極めて高くなってしまった可能性があります。 

 株式投資にとって流動性相場は極めて心地良い環境ですが、潤沢な流動性が投資家のリスク許与度を過度に高め、適正な企業価値以上に株価を押し上げる恐れもあります。そのため利上げ局面が近づくと株式市場に大きなショックが発生することは、この夏に実際にみられた通りです。現在の相場環境を勘案すれば、非伝統的金融政策からの出口戦略は中央銀行の想定以上に難航することが考えられます。 

決算などを無難に乗り切れば、年末にかけて日本株の戻り余地は広がるとの見方を維持

 今週は3月期決算企業の中間決算発表が集中します。中国の景気減速が業績に与える影響を見極め、業績相場移行への足掛かりとなるか、日本株にとっては重要な局面を迎えることになります(図表2)。また10月27日、28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、10月30日の日銀金融政策決定会合も重要イベントです。今回のFOMCでは政策据え置きの見方が優勢ですが、日銀については追加緩和期待が強まっているだけに、政策決定の内容次第では相場の波乱要因となる可能性があり、注意が必要です。 

 中間決算を無難に乗り切り、米中の不確実性の消化が時間の経過とともに進展した場合には、年末にかけて日本株が戻りを試す余地は徐々に広がるとの見方に変更はありません。一般に、資産価格への影響が見極めにくい材料が出た時ほど、相場は往々にして行き過ぎた水準まで売られることがあります(オーバーシュート)。そして時間の経過とともに材料の分析が進み、相場は落ち着きを取り戻すことになります(オーバーシュートの修正)。夏場のリスクオフ相場も、やはり従来通りの発生と収束の過程を辿るとみています。

 

151026 図表1151026 図表2 

 (2015年10月26日)

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