米大統領選挙と相場の関係(その1)
市川レポート(No.162)米大統領選挙と相場の関係(その1)
- 米大統領選挙は党の候補者を決める予備選挙と、候補者同士による本選挙からなる。
- 民主党ではクリントン氏の支持率がトップだが、バイデン副大統領の動向には要注意。
- 共和党でも不動産王のトランプ氏が躍進するなど、指名争いは混迷の度合いを深める。
米大統領選挙は党の候補者を決める予備選挙と、候補者同士による本選挙からなる
米国では2016年11月8日に大統領選挙が行われます。まだ1年以上先のお話しですが、すでに民主・共和両党で候補指名争いが本格化しています。大統領の出身政党と相場の関係はよく市場で話題となるため、選挙が近づくにつれて関心が高まるテーマになる可能性があります。そこで今回から3回にわたり、米大統領選挙と相場について過去の動きを検証し、少し早めに考え方を整理しておきたいと思います。
1回目は米大統領選の仕組みと現状の候補者の顔ぶれについてお話しします。米大統領選挙では、まず一般党員が州ごとの予備選挙や党員集会において自らの代理人となる「代議員」を選びます。代議員は全国大会で党の候補者を決定しますが、予備選が集中するスーパーチューズデーまでには候補者がほぼ固まります。そして11月の本選挙では一般有権者が自らの代表である「選挙人」に投票し、事実上大統領が決定します(厳密には選挙人が改めて投票し、候補者から大統領を選出します)。
民主党ではクリントン氏の支持率がトップだが、バイデン副大統領の動向には要注意
米大統領選挙までの主な日程をまとめると図表1の通りで、現在は各党の予備候補による討論会が行われています。10月13日に開かれた民主党の候補者討論会に参加したのは、ヒラリー・クリントン前国務長官、バーニー・サンダース上院議員、マーチン・オマリー前メリーランド州知事、ジム・ウェッブ元上院議員、リンカーン・チェイフィー前ロードアイランド州知事の5名でした。
討論会後の世論調査では、クリントン氏が高い評価を得て、支持率45%とトップを保っていることが判明しました。2位はサンダース上院議員で29%でした。ジョー・バイデン副大統領は立候補を検討中で、今回の討論会には参加しませんでしたが、支持率18%で3位につけています(図表2)。ただクリントン氏の支持は伸び悩んでおり、バイデン副大統領が出馬を表明した場合、情勢が大きく変化する可能性があります。
共和党でも不動産王のトランプ氏が躍進するなど、指名争いは混迷の度合いを深める
一方、共和党は8月6日のテレビ討論会開催時点で、これまで過去最多の17名が候補者指名争いに名乗りを上げました。このような候補者乱立の要因として「スーパーPAC」の存在が挙げられます。これは個人や団体から無制限に献金を集められる制度で、資金の少ない候補でも選挙活動ができるようになりました。これに加え、2016年は現職大統領が出馬しない「オープンシート」の選挙であるため、民主党が2期大統領を務めた後は共和党が有利との見方も影響していると思われます。
共和党では、過激な発言で注目されることも多い不動産王のドナルド・トランプ氏が躍進しており、その影響で一時は支持率トップであったウィスコンシン州のスコット・ウォーカー知事が選挙戦から撤退に追い込まれました。このように民主・共和両党とも指名争いは混迷の度合いを深めており、まだ現段階では相場への影響を考えるには幾分早いとみられます。ただ次回以降では過去の実績に基づき、大統領選挙と株式相場、そして為替相場の関係について、あらかじめ整理しておきたいと思います。
(2015年10月21日)
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