9月FOMCの結果分析

市川レポート(No.147)9月FOMCの結果分析

  • FOMC声明は総じてハト派的な内容、利上げ見送りは海外情勢によるところが大きい。
  • 議長は10月利上げの含みを残し、メンバーの多くは年内1回の利上げが適切とみている。
  • ただ利上げに関する不透明感は払拭されておらず、不安定な相場展開がしばらく続こう。

FOMC声明は総じてハト派的な内容、利上げ見送りは海外情勢によるところが大きい

 米連邦準備制度理事会(FRB)は9月16日、17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策の維持を決定しました。前回のレポートで、相場が安定するためには①FOMC声明、②イエレン議長の記者会見、③FOMCメンバーの経済および政策金利の見通しによって、利上げに関する不透明感が払拭されるか否かがポイントであるとお話ししました。以下、それぞれについて簡単に整理します。

 ①のFOMC声明は総じてハト派的な内容でした。今回は新たに「最近の世界経済と金融市場の情勢は、経済活動をいくらか制約し、短期的にはインフレに対する一段の下押し圧力になる」、「海外情勢を監視している」という文言が加わりました。一方、経済活動については緩やかなペースで拡大との判断が維持されており、利上げ見送りは海外情勢によるところが大きかったと推測されます。なおフォワードガイダンスに変更はありませんでした。  

議長は10月利上げの含みを残し、メンバーの多くは年内1回の利上げが適切とみている

 ②のイエレン議長の議会証言では、海外での不確実性の高まりと予想されるインフレの道筋がやや弱まったことを考慮し、利上げに関するインフレと労働市場に関する一層の証拠を待つのが適切との見解が示されました。また記者会見が予定されていない次回10月27、28日のFOMCでも利上げは可能であり、その場合は記者会見を開催すると述べるなど、市場が過度にハト派的にならないよう配慮する姿勢もみられました。 

 ③のFOMCメンバーの見通しでは、適切な利上げ時期を2015年とみるメンバーは前回の15人から13人に減少した一方、2016年が2人から3人に、2017年が0人から1人に増えました。また2015年末における政策金利の適正水準は予想中央値が0.625%から0.375%へ低下しました(図表1)。つまり年内1回の利上げが適切とみるメンバーが多いということになり、ハト派的な見通しが示されたことになります。 

ただ利上げに関する不透明感は払拭されておらず、不安定な相場展開がしばらく続こう

 ただ2015年末における政策金利の適正水準予想をよくみると、年内2回の利上げを見込むメンバーが6人、追加緩和を見込むメンバーが1人と、予想が広範囲に分布していることが分かります。イエレン議長は議長就任後、FOMCメンバーの見通しは政策意図を示す基本手段ではなく深読みすべきではないと述べています。実際に予想のばらつきをみても、これらから単純に利上げ時期やペースを判断することは難しいと思われます(図表2)。 

 今回のFOMCによって、年内利上げの可能性は高いものの、金融市場の落ち着きをみる必要があることが確認されました。しかしながらそれゆえに利上げ時期やペースに関する不透明感は払拭されず、結果的に金融市場の不安定な動きにつながる悪循環が生じることがやや懸念されます。リスクオフ(回避)につながる新たな材料が発生しなければ、下値固めの水準は日経平均株価が18,000円前後、ドル円が120円前後と思われますが、ともにいましばらく不安定な動きが続く可能性があります。

   150918 図表1150918 図表2

 (2015年9月18日)

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