日銀に変化の兆し
▣ 金融仲介機能の低下を気にしている模様
黒田日銀総裁が11月13日のスイス・チューリッヒ大学での講演で、リバーサル・レートに言及して以降、強力な金融緩和を推し進めてきた日銀の金融政策に、何かしらの変化の兆しが出てきたのではないかとの思わくが広がっています。
この講演の中で黒田総裁は、リバーサル・レートについて、「金利を下げすぎると、預貸金利鞘の縮小を通じて銀行部門の自己資本制約がタイト化し、金融仲介機能が阻害されるため、かえって金融緩和の効果が反転(reverse)する可能性があるという考え方」と、説明しています。
また、12月7日の講演では、「適切なイールドカーブの形成にあたっては、貸出・社債金利への波及、経済への影響、金融仲介機能への影響などを踏まえて、最も適切と考えられるイールドカーブの姿を判断する」と述べています。金融仲介機能(資金の借り手と貸し手の仲介)が適切なイールドカーブの姿を判断する際の重要な指標の一つであることが、改めて示されました。
▣ 政策金利を引き上げる可能性が出てきたのかは不透明
ただ、利下げなどの一段の緩和について慎重姿勢であることが示唆されたのか、金融仲介機能の低下を考慮して政策金利を引き上げる可能性が出てきたのかは不透明です。
もっとも、「金融機関の貸出態度は引き続き積極姿勢となっているなど、金融仲介機能の悪化は窺われていないとみている(政井審議委員)」、「本邦金融機関の低収益性には、低金利継続の影響だけではなく、他の何らかの構造要因が影響している可能性を示唆している(中曽副総裁)」など、金融仲介機能の悪化は窺われず、金融機関の収益低下は日銀の金融緩和だけが要因ではないとの立場のようです(図表1)。
▣ しばらくは現行の強力な金融政策を維持、今後の注目は
他方、資産買入れの持続性についても、「これまでのところ国債の買入れは円滑に行われており、先行きについても、当面、買入れの継続に支障が生じるリスクは小さい(黒田総裁)」としています。ストック効果(国債発行残高に占める日銀の保有比率が高まるほど、同じ買入れ額が及ぼす金利押し下げ圧力が強まる)がしっかりと働くもとで、より少ない金額の国債買入れによって同じ程度の金利低下効果を実現できることも、持続性に寄与するとしています(図表2)。また、指数連動型上場投資信託(ETF)などのリスク資産の買入れは、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するための必要な政策である(政井審議委員)と、継続する姿勢を示しています。
一段の金融緩和の可能性は低いとみられるものの、しばらくは金融政策が調整される可能性も低そうです。
来年は4月8日に黒田総裁が任期満了を迎えます。日銀総裁人事に加え、国債買入れ額の減少(ステルス・テーパリング)は続くのか、物価目標の引き下げなどは議論されるのか、物価目標達成前でも金融緩和の縮小はあるのか、また金融政策の運営方法の変更の有無などが注目されます。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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