ECBは、非常に慎重に量的緩和の規模を縮小

2017/10/27

▣ 大方の予想通り、量的緩和の規模を縮小

欧州中央銀行(ECB)は10月26日の理事会で、2018年1月以降の量的金融緩和(資産購入プログラム)の規模を600億ユーロから300億ユーロに縮小するとともに、期間を9か月延長しました。

市場は、予想通りとして、やや上昇気味であった欧州の長期金利は低下、欧州株は上昇し、ドイツのDAX指数が過去最高値を更新するなど、どちらかといえば好意的な反応を示しました。

ECBはこれまでの資産購入で、保有資産が2兆ユーロを超えてきており、年末には2兆2,800億ユーロ程度まで拡大するとみられます(図表1)。資産購入の上限が2兆5,000億ユーロとの声が聞こえる中、限界が近づきつつある資産購入をできるだけ長く継続したいという姿勢が見られます。ただ、規模を縮小するにあたっては、市場が動揺しないことが前提となります。内外の金融市場が落ち着いた反応を示したことから、ECBの目論み通りになった格好です。

▣ テーパリングではなく、単なる小規模化

ECB理事会での決定事項は以下の通りです。

  • 政策金利は変更なし(図表2)
  • 資産購入プログラム終了後も相当の期間、政策金利を現行水準で維持する
  • 来年1月から9月まで債券買入れを月額300億ユーロに減額する
  • 必要ならば資産購入プログラムの期間や規模を拡大する
  • 資産購入プログラム終了後も長期にわたって保有債券の償還元本を再投資する
  • 固定金利・金額無制限の資金供給(3か月物リファイナンスオペ)を少なくとも2019年まで継続する

また、ドラギ総裁は会見で、

  • これはテーパリング(買入額の段階的縮小)ではなく、単なる小規模化
  • 資産購入プログラムの終了時期を定めないオープンエンド維持を大多数が支持
  • 資産購入プログラムが突然終了されることはない
  • 金利は長期にわたり、資産買入れ期間を大きく超えて、現行水準にとどまる
  • 域内の物価上昇圧力は引き続き総じて抑制されており、大規模な金融刺激が依然として必要

と、金融緩和縮小に非常に慎重な姿勢を示しました。

▣ 利上げはまだ先

ユーロ圏の域内総生産(GDP)は今年4~6月期まで17四半期連続でプラス成長するなど、ユーロ圏の経済は順調に回復しており、資産購入の規模縮小に耐えうること、資産購入の終了時期を特定しなかったことで、終了に対する警戒感が強まらなかったこと、仮に終了したとしても保有債券の償還元本を再投資すること、また、現行の超低金利政策が継続することなどから、ECBの金融政策で金融市場が大きく振らされることは少なくなりそうです。

 今後は、インフレ率などのデータ次第ですが、資産購入プログラムは2018年9月で終了する、10月から減額し延長する、などが考えられます(図表3)。2018年内には資産購入プログラムは終了する可能性は高そうですが、利上げはもう少し先になりそうです(図表4)。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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