FRB、金融政策の正常化に向けて
- 今回のFOMCのポイント -
- ゼロ金利政策を維持
- 資産購入ペースを現行の月額1,200億ドルに据え置き
- 2023年末までのインフレ予想を上方修正
- FOMCメンバーは2023年末までに2回の利上げを予想
- 米国債などを買い入れる量的緩和の段階的縮小(テーパリング)についても議論
▣ 大規模な金融緩和を継続
米連邦準備制度理事会(FRB)は6月15、16日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.00~0.25%とするゼロ金利政策と、米国債などを大量に買い入れる量的緩和(QE)の維持を決めました。
▣ 声明文の主なポイント
- 「ワクチン接種の進展により、米国での新型コロナウイルスのまん延は減少した」との文言を追加
- 「最大雇用と物価安定の目標に向けてさらに著しい進展が見られるまで、米国債の保有を少なくとも月800億ドル、および不動産担保証券(MBS)の保有を少なくとも月400億ドル増やす」との方針を維持
- 「インフレ率は主に一時的な要因により上昇している」との見方を維持
- 「新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が甚大な人的・経済的困難を引き起こしている」との文言を削除
▣ 成長率見通し、インフレ見通しを上方修正
あわせて公表された経済見通しでは、2021年の成長率予測が7.0%と、3月の前回予測の6.5%から上方修正されました(図表1)。2022年は3.3%と変わらず、2023年は2.4%(前回2.2%)に引き上げられました。
失業率の見通しは前回とほぼ変わらずですが、最大雇用の目安となるFOMC参加者の失業率の長期見通しは4.0%で、2022年にはこの水準を下回り、2023年には3.5%まで低下する見通しです。
また、FRBが物価の目安として注目する食品・エネルギーを除くコア個人消費支出価格指数(コアPCEデフレーター)は、2021年は3.0%上昇と前回見通しの2.2%上昇から大幅に引き上げられました。その後は落ち着き、2022年、2023年は2.1%と、長期的な平均目標とする2%を若干上回る水準で推移する見通しです。
▣ 政策金利見通しについては、利上げを予想するメンバーが増加
FOMCメンバーの政策金利予想(ドットチャート)では、3月の会合と比較して2022年も2023年も利上げを予想するメンバーが増えました(図表2)。
2023年については、FOMCメンバー18人の参加者のうち、13人が利上げを予想しています。そのうち、11人が2回以上、8人は3回以上の利上げを予想しています。また、政策金利予想の中央値は0.625%で、2回の利上げが中心的な見方となっています。2022年についても、利上げを見込むメンバーは7人と前回の4人から増えました。
▣ パウエルFRB議長は、量的緩和の縮小に言及
市場では、利上げ予想が増えたことに加え、パウエルFRB議長が「資産購入策について議論することを決めた」と、テーパリングに言及したことから、FRBが金融政策の正常化に向けて舵を切ったとの見方が広がりました。
米短期金融市場では、2022年にも利上げが開始される可能性を織り込み、2023年にはさらに2回の利上げが織り込まれつつあります(図表3)。
無風との見方もあった今回のFOMCでしたが、利上げの前倒しやテーパリングの開始が示唆されたことから、早めに金融緩和の縮小を市場に織り込ませることで、大きな混乱なくテーパリングを開始する意図もうかがえます。
16日は、米国株は下落、米長期金利は上昇しましたが、レンジの範囲内の動きにとどまっています。引き続き、米経済指標や米金融当局者の発言、FOMCなどを確認しながら、テーパリングの開始時期、資産購入縮小のペースなどを探ることになりそうです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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