コロナ、政局にらみのFRB

2020/11/20

内外の中央銀行は、新型コロナウイルスの感染が再拡大していることへの警戒を強めるとともに、経済対策の必要性を訴えています。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は11月17日のイベントで、コロナのワクチン開発が進展していることは歓迎しているものの、最善のシナリオでもワクチン普及は数か月先で、財政政策による支援も必要になる公算が大きいとの認識を示しました。

米国の追加経済対策については、今回の米大統領・議会選挙で、大統領と上下両院を民主党が押さえるトリプルブルーとなるか、上院を共和党が、下院を民主党が制するねじれ議会となるかで大きく違ってくる可能性が高いとみられます。

また、米政治がどちらに転ぶかで、FRBの行動も変わってきそうです。

▣ トリプルブルーの場合

トリプルブルーとなるかねじれ議会となるかは、来年1月5日のジョージア州の上院決選投票を待つ必要があります。仮にトリプルブルーとなった場合には、民主党が主張する2.2兆ドル規模の大規模かつ包括的な追加経済対策がさらに拡大する蓋然性が高まり、財政悪化、国債増発を警戒し米長期金利に上昇圧力がかかりそうです。

この場合、FRBが追加緩和により一旦金利上昇を抑制し、その後、景気が回復してきた時点で緩和姿勢を弱めることで、イールドカーブ(利回り曲線)がベア・スティープ化(利回り上昇・急こう配化)することも想定されます。ドルについては、財政赤字を嫌気したドル売りと金利上昇によるドル買いの綱引きの後、景気回復を受けてドル高となる可能性もあります。

トリプルブルー下での、FRBの動きに注目が集まりそうです。

▣ ねじれ議会の場合

一方、上院の共和党指導部メンバーからは、1兆ドルを超える経済対策は共和党への支持を失いかねないとの懸念も伝わります。ねじれ議会となり、追加の経済対策が1兆ドル規模にとどまった場合には、国債増発を背景にした米金利上昇への警戒や財政赤字を嫌気したドル安の動きは大きく後退するとみられます。

他方、景気下支えのためにFRBは緩和姿勢を強める可能性もあり、内外の金利が一段と低下することも想定されます。また、FRBが金融緩和に動いた場合には、ドル安圧力が強まる可能性があります。

まずは、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、追加経済対策の遅れや新型コロナの感染拡大を受け、FRBが選挙の最終的な結果を待たずに何らかの手を打つかも注目したいところです。米国の政策面からは、米長期金利やドルは方向感が出にくい状況がしばらく続きそうです。

 

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