激動の2016年から、安定が試される2017年へ

2016/12/21 <>

2016年の回顧と教訓

2016年は重要な出来事がいくつも起こり、金融市場はしばしば動揺しました。それでも、米国株は上昇し、日本株は年初の水準を回復しています。世界経済も、緩やかに拡大し続けています。

2017年を展望するにあたっては、今年の経験から得られた次の三つの教訓が手がかりになるでしょう。

第一の教訓-市場の幻想

2016年の年明けは、中国など新興国の景気減速、並びに原油安が二大リスクと言われたものです。

しかし、いずれの懸念も、ほとんど幻想にすぎなかったようです。中国景気は今、むしろ安定感を示し、中国崩壊論は、さすがに飽きられつつあります。原油安についても、世界を危機的な状況へ陥れるようなものにはなりませんでした。それどころか、原油安はインフレを抑え、世界中の家計を助けました。

年後半は、米国の大統領選をめぐりトランプ・リスクが警戒されました。ところが大方の予想に反しトランプ氏が勝つと、金融市場は手のひらを返し、同氏の政策を都合よく解釈するのが流行となりました。

すなわち第一の教訓は、市場はいつも幻想に振り回され、そのムードは移ろいやすいということです。

第二の教訓-金融政策の限界

2016年に確認された第二の教訓は、金融緩和策(低金利など)には頼れない、ということです。理論と現実を重んじる人には何年も前から当然のことでしたが、ようやく今、多くの人が認めています。

特に日銀は、「異次元緩和→インフレ率上昇→景気拡大」との因果関係を、結局実証できませんでした。マイナス金利は評判が悪く、秋には事実上の反省を余儀なくされました。米国では最近、金融緩和とは反対の金利上昇が株高の材料とされています。利ざや改善で金融機関の業績が良くなるというのです。

金融政策の限界が認識されたのは、大きな進歩です。しかし今度は、財政出動(減税や公共投資など)への期待が不自然に高まっています。米国のトランプ期待も、大規模な財政出動への期待にすぎません。

第三の教訓-西洋の没落

それは、ポピュリズム(大衆迎合主義)的な現象です。金融緩和と同じく大規模な財政出動は、市場を一時的に喜ばせることができるからです。しかも、増税などの国民負担を先送りすることができます。

欧米におけるポピュリズム旋風こそ今年最大の事件、とみる人も多いでしょう。たしかに、反グローバリズム、自国中心、他国非難といった流行の動きに関し、ポピュリズムの面があるのは否定できません。

ポピュリズムは、欧米の誇る民主主義の歪んだ形です。また、欧米による世界統合が近現代史であった以上、反グローバリズムは、欧米支配の自己否定です。よってそうした歪みや自己否定は、欧米の行きづまりを明瞭に示しています。つまり2016年の第三の教訓は、「西洋の没落」は深刻だということです。

2017年は、意外な安定へ

ただし、「西洋の没落」は長期の傾向です。かつ、相対的な傾向であって、世界の没落を意味するわけではありません。世界全体では、2017年も今年並み(3%強)か、それ以上の経済成長率が見込まれます。

トランプ期待については、「市場の幻想」にとどまるでしょう。しかしそれは、来年後半まで漂い続けるかもしれません。一方「金融政策の限界」が判明した今、無謀な金融緩和が世界的なバブルを過熱させる恐れは、さほど大きくありません。

よって2017年の世界経済は、意外に安定的な姿を示すと見込まれます。それを根本から脅かすことがあるとすれば、大きなテロや紛争でしょう(トランプ氏のもとで米国が道を誤る可能性があるため、そのリスクは小さくないのですが)。

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