中国の改革を促すもの

2016/06/22

中国リスクは終わっていないが

英国の国民投票(23日)に注目が集まっていますが、それが落ち着けば、またしても「中国リスク」が蒸し返されそうです。ただ、中国経済が崩壊するといった極端な予想は、今年も当たらないでしょう。

実際、1-3月期の中国経済は、幅広い部門で回復の動きを見せました。4月以降は若干減速しているものの、経済の主軸を担うべきサービス業や個人消費は堅調です。6%台の経済成長率は続くでしょう。

不良債権問題への対処

とはいえ、課題は少なくありません。たとえば、固定資産投資(住宅、設備など)においては、民間部門の顕著な減速を国有企業が補っているのが実状です。その多くは非効率で、過剰資産をもたらします。

過剰資産の裏側には、過剰な負債があります。たしかに、中国企業の負債の増え方は、日本のバブル時をしのぐ勢いです。そういった負債は返済が危ぶまれ、金融機関の不良債権になりかねません。

国際通貨基金(IMF)も最近、これに注意を促しました。ただ、不良債権問題については、すでに世界中の経験が蓄積されています。IMFは、その知見を惜しみなく中国の政策当局へ提供するでしょう。

日本の教訓も活かせます。バブル終了に伴う損害を抑えるには、銀行へのすばやい資本注入が重要、といったことです。中国の場合、非効率投資の温床である国有企業の整理(民営化や統廃合)も必要です。

市場改革は進行中

株式市場についても、中国固有の問題をかかえつつ、正しい方向への改革途上にあると判断されます。

こうした中、「MSCI新興国株指数」に中国A株(本土株)が採用される、との期待があります。採用されれば、指数を参考にする多くの投資家にとって、中国株の重要性が一層高まるでしょう。

しかし6月、昨年に続き、MSCIはこれを見送りました。中国市場は海外から投資を行う上で未だ規制が多く、取引停止に関する不透明性も残っているため、指数への採用は時期尚早、という判断です。

とはいえMSCIは、そういった問題は改善されつつある、と評価し、さらなる改革が進めば採用を再検討する旨を表明しています。中国当局も採用を望んでいるので、自由化を進めざるを得ないでしょう。

世界が中国をサポート

そして日本の政府なども、「中国の脅威」は建前で、実際には、中国と協力していく方針のようです。

それを表わすのが、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)をめぐる動きです。これとライバル関係に立つのが日米主導のアジア開発銀行(ADB)ですが、両者は早くも歩み寄っています。

6月には、両者による初の協調融資が決まりました(パキスタンの道路建設向け)。これに関し、ADBの中尾総裁は「歴史的な節目」と胸を張りました。AIIBは今年稼働し始めたばかりなので、未熟です。よって日中を含むアジアの発展という見地から、ADBのノウハウを積極的に伝えるべきです。

以上のように、中国の前途は容易でないものの、後発国であるがゆえ、日本を含む他国や様々な機関のアドバイスを活かすことができます。中国の改革と発展を促すのは、そういった頼もしい支援です。

 

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