米中関係の改善を願う:世界の平和と発展のために

2023/06/26 <>

米中の対話を活発化すべき

人類文明は進歩し、世界経済は発展し続けるでしょう。ただし、それらの前提条件は、国々が和解し、協力し、連携し、世界平和の願いを共有することです。この点で懸念されるのは、米国と中国の関係です。

とはいえ、関係改善に向けた動きも生じています。6月後半、米国の国務長官が約5年ぶりの訪中を実施し、対話を今後継続する方向で、米中の合意に至ったのです。それだけでも今回の訪中は成功、と言えます。最も危険なのは、対話が途絶え、台湾問題などに関し、米中の疑心暗鬼が深まることだからです。

デカップリングは非現実的

経済の面でも、対中関係の急激な悪化を回避するための動きが、米国や欧州などで見られます。それを表すのが「デカップリングではなく、デリスキングを進める」という、今年頻繁に用いられる言い方です。

中国は、多数の国にとり、いまや最大の貿易相手です(日本を含む。図表1)。よって、世界経済を中国陣営と米欧陣営に切り離し(デカップリング)、自陣営に入り中国との取引をやめるよう、米国が日本などに強要するのは、全く非現実的です。米欧企業も、中国市場から完全に撤退するわけにはいきません。

デリスキングを徐々に検討

ただ、中国経済への過度な依存は、様々なリスクを伴います。例えば、米国が中国製品への関税を引き上げれば、中国の生産拠点から米国への輸出を行う各国企業は、コスト増などで苦境に陥りかねません。

そうしたリスクを和らげるための動きが、デリスキングです。対中依存度を下げるべく、生産拠点などを中国以外へ徐々に移す、といった動きです。多くの米欧企業などは、このように緩やかな動きを検討しています。急激なデカップリングは世界経済を混乱させるだけであり、ほとんど誰の利益にもなりません。

米欧中心秩序に対する挑戦

米中対話の継続、およびデカップリング論の後退は、世界の平和や発展の上で、喜ばしいことです。しかし、米中関係が危険な状態に悪化する可能性は、これから数年、あるいは数十年にわたり残りそうです。

いま我々が目撃しているのは、米欧中心秩序に対する、新興国の挑戦です。その代表格である中国が経済覇権を握るのを、米欧優越思想に凝り固まった人は、容認できないはずです。よって、自由と民主主義を守るといった口実で、今後も米国は、対中国の貿易・投資規制などを導入し、中国を怒らせるでしょう。

苦難を越えて、発展を希求

米欧と新興国の温度差を浮き彫りにしているのが、ロシア・ウクライナ戦争です。米欧がロシアへの経済制裁を強める一方、インドや中国などは、ロシアとの経済関係を、むしろ深めているのです(図表2)。

この戦争や米中対立の本質は、当事者による意地の張り合いです。また、戦争、対立、競争で興奮するのは、おそらく人間本性の一部です。進歩の過程で苦難を伴うのも、人類の宿命でしょう。これらは、実に厳しい現実です。それでも、全人種が有するはずの善性を信じ、世界の発展を希求し続けたいものです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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