80歳になっても:バイデン米大統領の気力と実績
「一般教書演説」
高齢者も、もちろん国への貢献を成し得ます。ただしそのためには、若い人に負けない気力と努力が必要です。昨年80歳となり米大統領の最高齢記録を更新したバイデン大統領は、それらを維持しています。
2月7日には、いわゆる一般教書演説が行われました。これは今後1年間の内政・外交に関する政権の基本方針を列挙する、米国政治の非常に重要なイベントです。ここでバイデン氏は、気力に満ちた演説を行ったのです。その力強さは、同氏は本当に80歳なのだろうか、との疑念を筆者に持たせたほどでした。
雇用情勢は良好
一般教書演説においてバイデン氏が強調したのは、経済に関する実績です。とりわけ、同氏が大領領に就任してからの2年間で米国の雇用者数は約1,200万人も増加した(図表1)、とアピールしたのです。
たしかに米国の雇用情勢は、おおむね良好です。失業率は1月に3.4%と、約53年ぶりの低水準になりました。雇用情勢が良すぎると中央銀行の利上げが長引く可能性が高まるため、金融市場では、雇用の堅調は必ずしも歓迎されません。しかし一般的な米国民にとっては、失業率の低下は非常に良いことです。
インフレは鈍化
インフレについても、バイデン政権は追い風を受けています。ガソリン代の下落などを受け、消費者物価指数の伸びは昨年半ば以降、鈍化傾向が続いているのです。これは、政権への不満を和らげるはずです。
物価水準はまだ高いものの、米国では賃金も増えており、このままインフレが鈍化すれば、国民の生活不安を大きく和らげます。2021年以降の高インフレは政府の政策が主因とは言えませんが、国民の批判の矛先は、現政権に向かいました。それだけに足元のインフレ鈍化を、バイデン氏は大いに喜んでいます。
数々の法が成立
さらにバイデン氏は、今回の演説で、大統領就任後2年間で成立させた数々の法をアピールしました。2021年のインフラ投資法、2022年の半導体補助法などです。これらは、たしかに非常に重要な法です。
それらの目標は、公共事業や政府の補助金などにより、米国産業を支援することです。また、それによって「取り残された労働者」の生活水準や尊厳を高めることです。さらに、経済などでの中国との厳しい競争に打ち勝つことです。いずれも前のトランプ政権が掲げた目標ですが、成功には遠かったものです。
深い分断の中で
そのような諸施策を、バイデン政権は、一部の野党議員の賛同も得て実現したのです。与野党間の分断が深い米国政治では特筆すべきことであり、それらの実現には、バイデン氏の高い調整力が寄与しました。
一般教書演説で同氏がいつも以上の余裕を見せたのは、経済の好転や、重要施策の実現のためでしょう。そうした実績を、米国民は十分に評価していません(図表2)。それでも、バイデン氏の力強い演説を今回視聴した世界中の人々は、高齢自体は必ずしも人や国の活力を妨げないのだと、元気づけられたはずです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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