トランプ氏の問題が論点に:米国の中間選挙も情勢が変転

2022/09/20

中間選挙の形勢は

世の姿や人の考えは、様々に移り変わります。金融市場も足元、米国の金融政策などをめぐり右往左往しています。政治に目を転じると、米国での11月8日の中間選挙に関し、情勢や言説が変転しています。

中間選挙は米国の上院・下院や州知事などの選挙であり、4年ごとに実施されます(大統領選挙(前回2020年、次回2024年)の「中間」に実施)。今年の中間選挙では、2~3か月前まで、野党・共和党の圧勝が予想されました。しかし現在、バイデン大統領や与党・民主党への支持が盛り返しつつあるのです。

ガソリン代の下落

実際、主要メディアによれば、上院では民主党の勝利する(過半数を維持)可能性が高いようです(例えば図表1)。下院については共和党が依然有利ではあるものの、圧勝ではなく、接戦を強いられそうです。

形勢を変えた要因として、ガソリン代の下落が挙げられます(全米の平均で6月中旬から約20%下落)。米国のインフレ率(消費者物価指数の上昇率)はまだ高いものの、多くの国民はガソリン代に敏感です。そのため、インフレはバイデン政権の失策が招いた、という共和党による主張の説得力が弱くなりました。

中絶をめぐる議論

また、人工中絶にかかわる議論も挙げられます。米国の最高裁判所が6月下旬、「中絶は憲法上の権利」という従来の通説を覆す判決を行ったのです。そのことが、共和党に対する大きな逆風となっています。

米最高裁判所では現在、保守主義(共和党寄り)が優位です(判事のうち6名が共和党寄り、3名が民主党寄り)。その最高裁が、「中絶の全面的禁止」を主張する極端な保守派を勢いづける判決を下したのです。これを受け、適切な制限下での人工中絶を支持する多くの国民が、共和党への不信感を持ちました。

トランプ氏の問題

さらにトランプ前大統領をめぐる疑惑や、トランプ氏に応援された共和党候補者の過激な姿勢も、中間選挙において、共和党に対する足かせとなっています(バイデン現大統領は民主党、トランプ氏は共和党)。

8月には、トランプ氏の自宅が米連邦捜査局(FBI)の捜査を受けました。大統領時に得た国家機密に関する文書を、同氏が多数保管していたというのです。だとすれば、深刻な法違反でしょう。また、トランプ氏に応援された候補者の多くは、2020年の大統領選挙は不正だった、などと信じている人々です。

一層の波乱を覚悟

中間選挙は、現大統領の実績に対する国民投票と言われます。しかし今や、トランプ氏の影響下にある共和党に米国政治を託してよいのか、との点に、論点が移りつあるのです。これは、民主党の追い風です。

なぜならトランプ氏は、米国全体では現在も不人気であるからです(図表2)。熱烈なトランプファンを除き、多数の国民は「法と秩序」を軽視する同氏の姿勢や品格を、好ましく思っていないようです。ただ中間選挙までには、さらなる波乱が起こり得ます。最近の米国政治は、市場動向以上に予測が困難です。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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