株式市場の夜明け?:ソフトランディングを期待

2022/08/22

6月中旬に起こったこと

「夜明け前が一番暗い」、これは株式市場でも真理なのでしょうか。米S&P500は今年6月16日、年初からの下落率が約23%に達しました。しかしその後には急反発し(図表1)、一旦、光が戻りました。

債券市場では、6月14日に米10年国債利回りが3.5%近くに上昇した後、大きく低下しました(足元は3%弱)。また原油や小麦など国際商品の相場も、その頃に下落基調を示しました。さすがに現在、急ピッチの株高などを警戒する声も出ていますが、6月中旬に潮目が変わったことは、まだ否定できません。

なぜ潮目が変わったのか?

ただ、潮目が変わった理由は不確かです。6月15日に米連邦準備理事会(FRB)議長が、大幅利上げが続くとは限らないという趣旨の発言を行いましたが、市場の基調を変えるほどの発言ではありません。

特定のイベントよりも、株価が十分に下落したとの見方が、市場の流れを変えたのかもしれません。S&P500は6月13日、インフレ懸念などで弱気相場入りしました(直近高値比20%超の下落率に)。米国で大きく報じられたこの暗いニュースは、むしろ「下がったときに株を買う」行動を後押ししたのです。

債券、商品、株式の関係

米国の国債利回り低下や、国際商品相場の下落も、米国株急反発の要因として考えられます。国債利回りの低下は将来の利上げペース鈍化などを示唆し、商品相場の下落はインフレ圧力を緩和するからです。

とはいえ、債券、商品、株式の関係は、単純ではありません。利回り低下や商品相場下落の背景には、投資家の安全資産需要が増えたことや景気減速懸念もあり、それら自体は株価の下落要因です。にもかかわらず米国株が急上昇したのは、投資家の最大関心事は現在、インフレと金融政策であるからでしょう。

米国の雇用と消費者物価

ただし、6月中旬に米国債や商品の相場動向が変わった理由についても、必ずしも明確ではありません。そのように、米国株も含め各市場の潮目は不確かな理由で変わり始めただけに、今後の行方は不透明です。

それでも最近、株高を支援する、実体的な材料が得られました。第一に、7月の雇用統計で失業率が「コロナ前」の水準に戻るなど、米国景気の底堅さが示されました。第二に、7月の消費者物価指数が前年比8.5%上昇と、6月の9.1%上昇から伸びが鈍化しました(図表2)。それらの意味は、極めて重要です。

ソフトなランディングへ?

なぜなら、それらの指標は、米国経済の「ソフトランディング(軟着陸)」シナリオを補強するからです。深い景気後退に陥ることなくインフレ率が低下するという、FRBが実現を目指すシナリオのことです。

もちろん7月の指標だけで、ソフトランディングは確実、とは言えません。今後のインフレ指標次第では、市場が再び暗い雲に覆われる可能性も、否定できません。とはいえ、地球が回転している限り、明けない夜はありません。市場の夜は明けたのかもしれない、と感じているのは、筆者だけではないでしょう。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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