金融政策と株価:リセッションも悪くない
金融政策と資産市場
金融市場の参加者が特に注目しているのは、主要国・地域の中央銀行です。その金融政策に一喜一憂し、株式・債券・為替などの相場は大きく変動します。一般の人々が見ると、不思議なことかもしれません。
人々にとり大切なのは、日々の生活や仕事です。中央銀行は利上げを行うのか、それは0.25%か0.50%か0.75%か、と考える暇などありません。しかし市場参加者は毎日、そうしたことで悩んでいるのです。一種の職業病ですが、利上げをめぐる思わくが、各資産市場、ひいては世界経済を動かすのが現実です。
金融政策と実体経済
ただし、金融政策がどれだけ実体経済を動かすのか、に関しては、明確なことはわかりません。政策金利の操作や、中央銀行による資産購入・資金供給による経済への影響は、必ずしも明瞭ではないのです。
それでも、利上げは資金調達コスト増を意味するので景気減速要因、という理屈は、筋が通っています。そのため大幅な利上げに対し、市場は反射的にネガティブな反応を示します。各国の株価が今年下落しているのは、インフレを抑止すべく、日銀以外の主要な中央銀行が利上げに傾斜しているからです(図表1)。
利下げが株高要因に
他方、利下げが行われれば、企業や家計、投資家の資金調達負担を軽減し、それは景気を支援するはずです。2020年に勃発した「コロナショック」後、株価が急反発した(図表2)のは、主にこのためです。
例えば、米連邦準備理事会(FRB)は同年3月、政策金利の上限を1.75%から0.25%へ大きく引き下げました。このことが、米政権による財政資金の大盤振る舞い(現金給付など)とともに、投資家らを安心させたのです。欧州中央銀行(ECB)や日銀も、資産買入れ策を含む金融緩和策を強化しました。
市場のムードが重要
2020年3月、感染抑止策としてのロックダウン(厳しい活動制限)で、景気が極端に悪化するのは、ほとんどの国々において確実でした。こうした最悪に近い状況下でも、主要国の株価は急反発したのです。
その経緯が示すように、市場参加者が注視するのは、目先の景気よりも、将来の金融政策です。よって、金融緩和に伴い景気はいずれ回復、という観測が、株価などの上昇を支えます。金融緩和が景気回復をどれほど促すのか、については明瞭でないものの、市場参加者のそうした観測で、市場ムードは好転します。
リセッションを期待
そのような経路を踏まえると、足元の株高についても納得が得られます。米国などのリセッション(景気後退)が現実味を帯びているにもかかわらず、先週末、米欧やアジアの主要株価指数は急上昇しました。
リセッション入りすれば、FRBは利上げを止め、来年には利下げ姿勢に転じるだろう、と期待されるのです。これを踏まえると、早くリセッション入りした方がよさそうです。リセッションは一般人にはつらいことですが、金融緩和を促すという点で、市場参加者にとっては、必ずしも悪いことではありません。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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