ロシア・ウクライナ戦争論:投資家も直視すべき現実

2022/06/13 <>

侵攻から約4か月

ロシアがウクライナ侵攻を開始し、戦争が始まってから、4か月近くが経過しています。その泥沼化は、金融市場にも暗い影を落とし続けています。よって日本など遠い国の投資家も、終戦を切に願っています。

日々の戦局に対し、金融市場はあまり反応しなくなっています。しかしこの戦争で、世界秩序というものは極めて弱い基盤の上にあるのだということを、皆が思い知りました。世の中は本来、不確かで不条理なことばかりです。そのような厳しい現実を突きつけられたことが、市場の先行き不安を増幅しています。

未来の予測は困難

いま投資家が意識する「不確かなこと」とは、世界のインフレ動向、米欧の利上げによる世界経済への影響、コロナウイルスの動向などです。それらの正確な予想は、人間にもコンピューターにも無理です。

そうした状況であるだけに、ロシア・ウクライナ戦争は、「未来は予測困難」との印象を、投資家らの心理に刻印しています。これによる漠たる不安が、先行き不透明感を強め、米国株などの変動性を高めています(図表1)。したがって、人道上見地はもちろん投資家の観点でも、一刻も早い戦争終結が望まれます。

まずは停戦協議を

「不確かなこと」は、関連し合っています。つまり、戦争や感染症で資源や食料、製品の価格が高騰すれば、インフレが高進します。それは各国の利上げを促し、利上げが行き過ぎれば、景気が落ち込みます。

逆に言うと、戦争などが落ち着けば、金融市場のムードも急速に改善しそうです。和平交渉が進めば、原油や天然ガス、小麦など、ロシアやウクライナが大きな産出力を持つ資源・食料の供給制約が和らぐ、と期待できるからです。停戦協議が始まるだけでも、市場参加者のインフレ懸念は若干緩和するはずです。

欧州内でも不協和

ただ、停戦協議が始まったとしても、交渉は難航必至です。ロシアの最低限の要求は、ウクライナ東部の正式な独立(→事実上ロシア陣営に)でしょう。ウクライナとしては、受け入れるのが難しい要求です。

ウクライナを支援する欧米も、戦争の落としどころに関し、意思統一が図れていません。ドイツやフランスなどは、停戦を働きかけています。それに対し、英国の主要メディアなどは、「打倒ロシア!」というトーンの好戦的な論陣を張っています。そうした欧州内の不協和で、戦争がさらに長引く恐れがあります。

戦争の美化は不可

どれだけ美化しようとも、戦争とは、人と人との殺し合いです(図表2)。また、対ロシアの制裁は、ロシア国民を苦しめます。日頃「人権」を説く英メディアなどは、そうした現実を見る視点を失っています。

 たしかにロシアへの安易な譲歩は、プーチン大統領が始めた侵略を、実質的に追認しかねません。それでも戦争という状況下で、野蛮な面を露呈しているのが、英国(および米国など)の一部メディアだと言わざるを得ません。それらを見ると、人類の倫理的基盤は実に弱いのだという現実を、思い知らされます。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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