フランスの大統領選挙:マクロン氏の再選は不確実
金融市場に必要なもの
金融市場が必要としているのは、先行きに関する確実性と安心感です。しかし不幸なことに、いま新たな不確実性が加わっています。今月のフランス大統領選挙について、結果がわからなくなってきたのです。
10日に行われた第1回投票では、現職のマクロン氏が首位となりました(図表1)。ただ、過半数には全く届かず、同氏は、2位のルペン氏との間で、24日の決選投票により決着をつけることになります。もしもマクロン氏が敗れれば、欧州に激震が走り、市場も混乱するでしょう(おそらくユーロの下落など)。
欧州のリーダーとして
現在ほど欧州の結束が必要なときは、ほかにありません。その事実上のリーダーは、マクロン氏です。ドイツの首相は就任後まだ日が浅く、英国については、すでに欧州連合(EU)から離脱したからです。
ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領と対峙する上で、マクロン氏は、頼りになるリーダーです。同氏は、民主主義や国際主義といった欧州の価値観を、極めて尊重しているためです。一方、ルペン氏は極右(国粋主義)に位置づけられ、侵攻前には、主義が似ているプーチン氏を称賛していました。
ウクライナ紛争の影響
約1か月前までは、マクロン氏の再選はほぼ間違いない、と見込まれました。しかし足元、ルペン氏との支持率の差がかなり縮まっており、ルペン新大統領誕生というシナリオも、無視できなくなっています。
マクロン氏は、ウクライナ紛争の勃発前後、プーチン氏との会談を積極的に行い、欧州のリーダー格であることをフランス国民に印象づけました。しかし結局、侵攻を阻止することはできず、紛争は悲惨さを増しています。よって、紛争への果断な関与は、マクロン氏の決定的な長所にはならないかもしれません。
関心事は特にインフレ
また現在、国民の最大関心事は、物価です。3月には、消費者物価指数が前年比5.1%上昇と、過去最大の伸びを示しました(図表2、指数算出開始は1997年)。とりわけ、ガソリン代などが高騰しています。
ルペン氏は、この状況をうまく利用しています。インフレによる生活苦を、減税などで和らげることを公約としているのです。また、年金受給開始年齢(現行62歳)の据置き、もしくは引下げを主張しています。一方、マクロン氏は、65歳への引上げを掲げています。これらは、ルペン氏に有利に働きそうです。
極右思想はまだ残存か
生活苦の緩和を前面に出す一方、ルペン氏は、移民排斥などの思想を和らげています。また、フランスのEU離脱という主張もひとまず取り下げました。それらの結果、危険な極右との印象が薄まっています。
しかし、極右的な思想は根本的には変わっていない、とみられます。それだけに、ルペン氏が大統領になれば、欧州の結束が危ぶまれます。マクロン氏勝利の可能性が現時点ではまだ高いものの、決選投票までに形勢が変わっても、不思議ではありません。よって金融市場は、不確実性に悩まされ続けるでしょう。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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