ウクライナ紛争でも株高:楽観的すぎるのか?
株価はむしろ上昇
ロシアとウクライナ・米欧との対立は、人類を破滅に導く可能性を秘めています。ただ、株式市場では、さほど悲観されていないようです。ロシア軍の侵攻後、米国株などはむしろ上昇しているのです(図表1)。
これは、停戦協議に対する期待が理由の一つです。また、市場参加者がいま特に注目しているのは、世界的なインフレや金融政策です。この点、米国では高インフレが続き、それを背景に、政策金利や国債利回りは3月に上昇しました。それにもかかわらず米国経済が底堅さを見せていることも、株高材料です。
停戦協議の展望は
ただ、金融市場の思わくが正しいという保証は、全くありません。実際、ウクライナ紛争は、長期化の様相を呈しています。それがさらに深刻化すれば、米国などの経済も、急減速を余儀なくされかねません。
停戦協議は続いていますが、ロシアのプーチン大統領は、強硬姿勢を保つでしょう。そして、ウクライナ東部の親ロシア地域の独立や、ウクライナの非武装化・中立化などを要求し続けるはずです。しかし、完全な非武装化については、ロシアの再侵攻を容易にするので、ウクライナは受け入れられないでしょう。
米国経済の先行き
米国経済に関しては、3月の失業率が3.6%と「コロナ直前」である2020年2月の3.5%へ、ほぼ戻りました。そのように、ウクライナ紛争やインフレ高進などが続く中でも、経済はまだ拡大しています。
しかし米国経済の回復は、コロナウイルスの感染減に促されています。また、2020~21年の現金給付などで家計が支えられた、との事情もあります。そうした一時的要因の効果は、これから薄れるでしょう。今後は、インフレによる家計の購買力低下や利上げを受けた投資抑制が、米国経済の重しとなり得ます。
ユーロ圏への打撃
もっと懸念されるのは、ユーロ圏の経済です。ドイツなどは、ロシアの天然ガスなどへの依存度が高いためです。こうしたエネルギーの不足や価格高騰が続けば、ユーロ圏の製造業などは、大打撃を受けます。
2月中旬まで、ユーロ圏と米国の経済成長率は今年、ほぼ同じ水準が予想されました。しかし、ウクライナ紛争に伴い、ユーロ圏の成長率は、米国を明確に下回る見通しとなっています。紛争勃発後、米ドルが対ユーロで上昇しているのは(図表2。ただ、対円ほどではない)、経済見通しの米欧間格差も要因です。
米欧結束は試練に
紛争の勃発後、対ロシアの経済制裁や、ウクライナへの軍事支援などで、米国と欧州は結束を見せました。そのことで米欧メディアは大いに喜びましたが、結束が本当の試練に直面するのは、これからです。
上述のとおり、紛争による経済への影響は、米欧では大きく異なります。そのため、米国が対ロシアの強硬策を主張する一方、ドイツやフランスなどは、ロシアとの対話も探っています。このように米欧の結束が乱れる恐れも踏まえると、ウクライナ紛争に対し、株式市場はやや楽観的すぎるのかもしれません。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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