為替の着眼点:いま、ユーロが面白い
ユーロ高の背景に
ユーロは足元、対円で2年超ぶりの高値をつけています(図表1)。これには、三つの背景が挙げられます。第一に、根本的なこととして、ユーロ圏や欧州連合(EU)の統合が徐々に深化する、との観測です。
第二に、最近の世界的な株価変動にもかかわらず、金融市場の楽観ムードは、まだ健在だということです。投資家のリスク選好姿勢が優勢であるとき、ユーロ買い・円売りが進みやすいのです。第三に、ユーロ圏景気は、昨年終盤には日米に比べ精彩を欠いたものの、今後は回復へ向かう、と期待されることです。
景気は昨年比良好
ただし、イタリアやドイツなどでは、現在、コロナウイルスの新規感染が増加する動きも見られます。変異したウイルスへの警戒感もあるため、ユーロ圏の経済活動が正常化するのは、遠い先のことでしょう。
とはいえ、ユーロ圏でも、中国向けなどの輸出は伸びており、製造業の景況感は改善傾向です。また、感染に伴う行動制限の影響を受けやすいサービス業についても、さほど落ち込んでいません。パニックに陥った昨年春とは違い、人々は、ウイルスに慣れてきた様子です(良いことかどうかはわかりませんが)。
ワクチンでは劣勢
気がかりなのは、ワクチンの普及動向です。バイデン政権下でウイルス対策を強化した米国や、昨年にEUから離脱した英国と比べ、ワクチンの普及に関し、EUは大きく後れを取っているのです(図表2)。
EUでのワクチン調達は、主に欧州委員会が取りまとめています。EU27か国は、人口や経済力において極めて多様です。一元調達の狙いは、それらの国々に、ワクチンを公平に配布することです。しかし、各国の実情に応じた柔軟な配布を行う上で、EUの機構の官僚的な体質が、しばしば障害となっています。
EUの統合は不変
そのため現在、EU加盟国の間で、歩調の乱れが生じています。例えば、ハンガリーやチェコなどでは、ロシアや中国が開発したワクチン(EUとしては未承認)の導入を、独自に検討する動きが見られます。
それでも、ウイルス危機はEU統合をむしろ後押しする、とのシナリオに、変わりはありません。EUのワクチン戦略については、小国のマルタなどからは、高い評価を得ています。また、今年は、EU復興基金が稼働します(EUが調達した資金を各国に分配)。これを受け、財政面のEU統合も深まるはずです。
イタリアで新政権
注目すべきはイタリアです。この国は、ユーロ圏第3位の経済大国でありながら、財政不安が尽きません。それをEU復興基金などで立て直せるのか。EUの未来は、かなりの程度、この点にかかっています。
そのイタリアで2月、心強いことが起こりました。多党の支持を受け、新政権が発足したのです。しかも新首相は、欧州中央銀行(ECB)前総裁を務め、金融市場やEUで信頼の厚い、マリオ・ドラギ氏です。そうした光明の差すユーロ圏の通貨が、日本円に対し上昇しているのは、おそらく合理的なことです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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