米テクノロジー株の変調:何が問題なのか?
これまでの株高は行き過ぎ
いま、米国の株式市場で最も注意すべきことは何でしょうか。それは、コロナウイルスの感染拡大に伴い急落した3月下旬以降、あまりにも急速に、かつ大きく株価が上昇したこと自体でしょう(図表1)。
特に、テクロジー株の比率が高い米ナスダック指数は、一時、安値から約76%も上昇しました(3月23日~9月2日)。より多様な大企業約500社からなる米S&P500指数も、同じ期間に約60%上昇しました。ウイルスの感染収束には遠く、景気不安も強いもとでのこの株高は、やや行き過ぎでした。
ついに大きく調整したが
それだけに、少なくとも一時的な調整は避けられません。そうした警戒感が広がる中、ついに、ナスダック指数は、9月3日から11日までに約10%も下落しました。決定的な要因は、特定できません。
しかし、米国株の上昇期は終わり金融市場の混乱期へ、とみるのは、まだ早そうです。理由として、ここでは三つ挙げられます。第一に、投資家の大半は冷静さを維持していることです。例えば、3月の市場混乱時とは違い、今般の株安場面では、債券や為替などは総じて落ち着いた動きを保っています。
テクノロジー株を支えるストーリー
第二に、コロナウイルスの流行は今後何年も続きそうです。よって、世界的に、生活や仕事のオンライン化は進む一方とみられます。このストーリーの勝ち組として、テクノロジー企業はやはり有望です。
ただ、ワクチンなどでウイルスが撲滅され、その結果オンライン化がやや鈍る可能性も、わずかにあります。しかしこの場合、経済の回復に伴い、出遅れ感の強い株式が買われるはずです(エネルギー株、金融株など)。つまり、ウイルスの行方がどう転んでも、米国株全体の一方的な下落は考えにくいのです。
FRBの重要な方針変更
第三に、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和が、引き続き投資家の心理を支えるでしょう。3月下旬の株価反発も、大きなきっかけはFRBの緩和策でした。その長期化が必至とみられるのです。
この点、FRBは8月下旬、重要な方針変更を行いました。今後、インフレ率が一時的に2%を超えるのを容認する、というのです。インフレへの警戒を、明確に緩めたのです。このメッセージを発した以上、実際に(予想でなく)高インフレが持続する状態にならない限り、利上げなどはまず無理です。
それでも、少数企業への偏りは大きなリスク
ただし、今後、米国株が上下に大きく動く場面は増えるかもしれません。この市場は現在、ごく少数のテクノロジー株に偏っています(図表2)。このため、それらの株価に指数が左右されやすいのです。
また、そうした企業による寡占が強まり過ぎると、経済活力の阻害や、格差の拡大といった弊害をもたらします。さらに「株価上昇=好景気」と誤認されれば、景気対策が手薄になりかねません。このような意味でも、テクノロジー株主導の米国株上昇は、それ自体がリスクであることに変わりありません。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会