米国の株高は続くか?:リスクを軽視できないが、市場への朗報も

2020/07/06

記録的な株高

今年前半の株式市場は、記憶にないほどの激しい相場でした。後半も、退屈な相場にはならないでしょう。コロナウイルスの猛威や、米中の緊張が続いているほか、米大統領選などを控えているからです。

米国株について振り返ると、ウイルスの感染拡大を受け、3月に一時急落を余儀なくされました。しかし4-6月期、S&P500指数は20%も上昇しました(四半期ベースで約21年ぶりの上昇率。つられて日本株なども大幅上昇、図表1)。ただ、6月は失速し、同指数の月間上昇率は2%にとどまりました。

危うい前提

失速したのは、潜在的なリスクが警戒されているためです。その一つは、米国の株高を後押ししている財政支出や金融緩和には、限界や副作用もあることです(財政赤字の膨張、相場形成のゆがみなど)。

それ以上に警戒すべきは、コロナウイルスの感染動向です。たしかに、「感染の落ち着き→経済活動の再開→景気回復」とのシナリオは、もっともらしさを備えています。実際、営業制限などの緩和に伴い、5月以降、米国の雇用は急回復をとげています。しかし今後、感染が落ち着く保証は、全くありません。

感染抑止に失敗

いま、そのリスクが高まっています。米国南部・西部の州などで感染者が急増し、営業再開が見直されているのです。「確認済み感染者増は検査を増やした結果だ」という言い訳は、気休めになりません。

というのは、入院患者も増え、テキサス州などでは医療崩壊も危惧されているからです。よって近々、米国全体の死亡者数も、増加傾向となりそうです。米国の惨状は、欧米でも際立っています。やや先に感染拡大が始まったイタリアやスペインでは、現在、感染者数の減少傾向が続いているのです(図表2)。

大統領の責任

しかしトランプ大統領は、目先の経済を優先し、ウイルスの危険を直視していません。一方、多くの州知事らは感染抑止に真剣ですが、中央政府と州政府との不協和が、効率的な対策を阻害しています。

経済優先の姿勢は、11月の大統領選で、裏目に出そうです。事実、トランプ氏を支持する人が比較的多い高齢者(特に白人男性)の中でも、同氏に失望する人が増えています。高齢者はコロナウイルスにぜい弱なので(感染すると重症化しやすい)、目先の経済よりも健康の方が重要、と考えるのが自然です。

貿易戦争は茶番

トランプ大統領は、ほかの面でも米国人を失望させています。最近出版されたジョン・ボルトン前大統領補佐官の回想録で、「自分の再選が第一」というトランプ氏の姿勢が、事細かに暴露されたのです。

その本によれば、中国との貿易戦争も、本人が大統領選で再選を果たすための単なる道具です(農産物を中国に買ってもらえればよい)。また、人権問題にもトランプ氏は全く無関心、と読み取れます。よって米中の緊張は、茶番劇めいたものに終始しそうです。この点は、今年後半の株式市場への朗報です。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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