第2波に備えて:女性が率いるニュージーランドの成功に着目

2020/06/15 <>

共存か撲滅か?

経済の崩壊を避けるには、新型コロナウイルスとの共存を選ぶしかないのでしょうか。諦めるのは、まだ早いでしょう。経済の底堅さを保ちつつウイルスの撲滅に成功した国も、実際に存在するからです。

すなわち、ニュージーランドでは、5月下旬を最後に、このウイルスの新規感染者が出ていません(図表1)。そして6月8日、残っていた患者が回復し、感染者はゼロになりました。これを受け国内のロックダウン(外出・営業制限など)は解除され、普段の日常に近づきました(ただし、入国制限は継続)。

成功の秘訣

ニュージーランドが独特なのは、新型コロナウイルスの「抑制」や「共存」でなく、「撲滅」を当初から目指したことです。そのため3月下旬、世界で最も厳しいレベルのロックダウンが導入されました。

ウイルス検査も迅速・大量に実施されました。そうした対策を、女性首相であるアーダーン氏は、国民にわかりやすく説明しました。これらが成功し、ついに今般、ウイルス撲滅という喜びの日を迎えたのです。政府や専門家の明確な方針と、それに対する国民の信頼が、この偉業を可能にしたのでしょう。

警戒体制は継続

ただ、南半球に位置するニュージーランドは6~9月が冬季なので、ウイルスが再び活発化するかもしれません。そのため人々は浮かれ切っておらず、検査体制や感染経路の追跡システムは維持されます。

もし国境管理に失敗すれば、他国からウイルスが侵入する恐れもあります。このため、他国との往来は、オーストラリアなど少数の国との間に限り再開する方針が検討されています。なお、オーストラリアの場合、ロックダウンは緩やかでしたが、早期の検査や国境封鎖で、ウイルス抑止に成功しています。

経済も回復へ

もちろん、ニュージーランドも、ロックダウンのため経済が一旦、打撃を受けました。中でも、主要産業である観光業へのダメージは甚大です。年前半の経済成長率は、大幅なマイナスとなる見通しです。

とはいえ、ロックダウンの緩和・解除に伴い、景況感は改善を示しています(図表2)。また、失業対策やインフラ投資からなる経済対策が、今後の景気回復を後押ししそうです。財政赤字は増えますが、ニュージーランドの財政は、日本などに比べはるかに健全です。よって、信用力は揺るがないでしょう。

女性リーダーの活躍

つまり、ニュージーランドは、ロックダウンによる短期的な痛みを耐え抜きました。そして、アーダーン首相の方針に基づきウイルスを撲滅した結果、今後の景気回復がより確かなものになりそうです。

同首相に限らず、ウイルスの犠牲者を抑える上で、女性リーダーの活躍が光っています(ドイツ、台湾、フィンランド等で)。共通点は、国民の健康が第一という(女性ならではの?)強い思いです。感染第2波が迫る中、経済への配慮から中途半端な策をとってきた日本も、彼女らの成功に着目すべきです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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