トランプ氏とロシア疑惑:決着は来年の大統領選で

2019/04/24 <>

待ち焦がれたレポート

2016年秋の大統領選でトランプ氏(共和党)がクリントン氏(民主党)を破ったとき、金融市場や一部の日本人は、これを手放しで歓迎しました。ただ、その意味や問題は、深く考察されませんでした。

重大な問題の一つは、冷戦後も米国が敵視してきたロシアとの関係です。トランプ氏勝利の背後には、ロシア政府の協力があるのではないか、との疑惑が当初からつきまとっているのです。2年間にわたりこれらを調べていたムラー特別検察官が、ついに今月、報告書(ムラー・レポート)を公表しました。

「共謀」はなかったとしても、「司法妨害」は?

この分厚いレポートには三つのポイントがあります。第一に、大統領選にはやはりロシアの関与があり(クリントン陣営へのハッキングなど)、トランプ陣営もそれを「期待」していたと断じている点です。

しかし第二に、トランプ陣営とロシアとの「共謀」を示す証拠は見つからなかった、としています。とはいえ第三に、ムラー氏らの捜査に対しトランプ陣営が「司法妨害」を行ったのか、に関しては、判断を保留しました(ただし、トランプ氏がムラー氏を解任させようとした生々しい実例を数多く描写)。

トランプ大統領の弾劾には至らず

レポートの内容は目新しいものばかりではありません。しかしそれは、今までの報道がほぼ正しかったということを表します。権力の監視というメディアの役割が、米国では立派に果たされているのです。

ただ、米国人は連日そうした報道に触れているので、トランプ氏の言動には、もう驚かなくなっています(金融市場もロシア疑惑をめぐる最近の動きに対しほぼ無反応)。ムラー・レポートが出た後も、同氏の弾劾(議会による大統領解任)を求める声は、米国全体ではさほど盛り上がっていません(図表1)。

2020年大統領選の行方は?

民主党の指導部も、弾劾ではなく来年秋の大統領選で決着をつけようという方針です。昨年の中間選挙から、医療保険など、生活に密着した問題を争点にした方が同党の勝利につながる、と学んだのです。

大統領選については、まだ全く予想できません。特に今回は、民主党から名乗りを上げている人がすでに18名もいます。その中から有力な候補者として数名の名前が挙げられるようになるのは、早くても今年の夏頃です。さらに金融市場で話題となるのは、公約が固まってくる来年になってからでしょう。

トランプ氏の勝利=ロシアの勝利

結局ロシア疑惑は曖昧な状態のまま、大統領選に突入しそうです。しかし、根本的な問題から目をそらすわけにはいきません。つまり、ロシアのプーチン大統領らはなぜトランプ氏を応援したのか、です。

それは何より、「米国第一」のトランプ氏が大統領になれば、旧西側陣営の結束が崩れる、という確信を得ていたからでしょう。実際その後、欧州や日本では米大統領への信頼度が著しく低下しています(図表2)。米国の忠実な同盟国である日本は、トランプ大統領の登場を喜んでいる場合ではなかったのです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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