来週の金融市場見通し(2022年8月8日~2022年8月12日)
■来週の見通し
ペロシ米下院議長の台湾訪問を受け、米中関係緊張への警戒が強まったものの、台湾訪問終了後は過度な警戒は和らぎました。他方、米連邦準備理事会(FRB)高官から、インフレを警戒する発言が相次ぎ、早晩米景気が減速、またインフレもピークアウトし、利上げペースを緩めるとの思わくは後退しています。来週は米雇用統計を受けた米金融市場の反応や7月の米消費者物価指数(CPI)などの経済指標、またFRB高官の発言に加え、佳境を迎える企業決算発表も確認しながら、方向感を探ることになりそうです。
◆株価 :方向感の乏しい展開に
日本株は、方向感の乏しい展開が予想されます。米国の利上げへの過度な警戒感後退が株価を下支えするとみられる一方、世界景気の減速懸念が上値を抑える見通しです。そうした中、国内企業の4-6月期決算発表が続くほか、米国では消費者物価指数など重要な指標が発表されるため、それらの内容をめぐり市場が神経質となる場面もありそうです。また、国内では新型コロナウイルスの感染急拡大が続いており、その動向にも注意が必要です。
◆長期金利 :居所を探る
日銀が強力な金融緩和を継続する中、欧米中銀の金融引締めで世界景気が減速するとの懸念から、安全資産とされる国債は買いが優勢(価格上昇、利回り低下)になり、一旦上昇した長期金利は、週末には0.16%程度まで低下しました。米長期金利はひとまず底打ちしたものの、景気悪化懸念がくすぶり、一段の上昇も限定的とみられる中、長期金利は0.1%台後半で居所を探る動きになりそうです。30年国債入札も確認したいところです。
◆為替 :変動性高い
米景気の減速懸念などを背景に、米長期金利が低下したことから、ドル円は一時130円台半ばまで下落しました。しかし複数のFRB高官からタカ派的発言が相次ぎ、足元、米長期金利はやや戻しており、ドル円は133円程度の水準で推移しています。日米金融政策の方向性の違いは引き続きドル円の下支え要因ですが、米景気減速懸念とインフレ懸念の綱引きの中、ドル円は当面、方向感の見定めにくい、変動性の高い展開が続きそうです。
◆Jリート :一進一退の中、上値を探る
東証REIT指数は、週初に1月以来の水準まで上昇しましたが、その後は上げ幅を縮小しました。もっとも、おおむね2,000ポイント台で底堅く推移していることは安心材料です。下落する場面では押し目買いも強まりそうです。米長期金利が3%を、国内の長期金利も0.2%を下回って推移していることも下支え材料です。とはいえ、新型コロナの感染動向には注意が必要です。7月の東京都心オフィス空室率も確認したいところです。
■来週の注目点
景気ウォッチャー調査(7月) 8月8日(月)午後2時発表
景気ウォッチャー調査の現状判断指数(DI)は、6月に前月差1.1ポイント低下の52.9となりました。食品などの値上がりが家計動向関連の景況感を圧迫したほか、資源高や部品不足が企業動向関連の悪材料となりました。
7月の現状判断指数も、小幅な低下が見込まれます。引き続き食品高や資源高などが、家計動向関連と企業動向関連の重しとなった模様です。また7月以降、新型コロナウイルスの感染が急拡大しており、これに伴う行動自粛の動きも、家計動向関連などの景気判断を押し下げたとみられます。食品高や資源高、感染拡大は当面継続する可能性が高く、8月以降の景気回復も緩慢となりそうです。
米消費者物価指数(7月) 8月10日(水)午後9時30分発表
6月の米消費者物価指数(CPI)は、総合で前年比9.1%の上昇となり、市場予想を上回るとともに、1981年11月以来の高い伸びとなりました。他方、変動の大きい食品、エネルギーを除くコアCPIは、同5.9%上昇と、市場予想をやや上回りましたが、前月より伸びは鈍化しました。コアの伸びはやや落ち着きを見せたものの、引き続き価格上昇は広い分野に及んでいます。
食品やエネルギー価格の上昇の勢いにやや陰りが見えるものの、引き続き価格上昇の流れは続きそうです。7月は総合で前年比8.8%程度の上昇、コアは同6.1%程度の上昇を想定しています。
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