来週の金融市場見通し(2020年12月28日~2021年1月8日)

■来週の見通し

英国と欧州連合(EU)は通商協定で合意し、離脱に伴う混乱が回避されました。他方、米国ではトランプ大統領が追加経済対策法案への署名を拒否しましたが、早晩成立するとの見方から、市場への影響は今のところ限定的です。年明け5日には、米ジョージア州の上院選決選投票が予定されています。共和党が上院を制し、米議会がねじれ状態になると、バイデン新政権の政策の実現が難航することも想定されます。国内で新型コロナウイルスの感染が過去最多を更新する中、英国で発生した変異種にも注意が必要です。

◆株価 :底堅い展開か

日本株は、底堅い展開が予想されます。新型コロナのワクチンが普及しつつある中、それに伴う来年の世界経済の正常化期待が、年末の株式市場をサポートする見通しです。また、米国の追加経済対策の成立が近いとみられることや、英国と欧州連合(EU)が24日、通商協定の合意に至ったことも、市場のムードを支える見込みです。ただ、新型コロナの感染が国内で急拡大しているため、日本株が一方的に上昇する可能性は低いとみられます。

◆長期金利 :米上院を民主党が制すると金利上昇も

英国での新型コロナの変異種の発生や米追加経済対策法案の成立の遅れは金利の押し下げ材料も、来年度の国債発行計画で40年債が増額されたことやワクチンの普及への期待などは金利の押上げ要因となり、長期金利はもみ合いが続きました。米ジョージア州の上院選決選投票で民主党が上院を制すると、大規模な経済対策で米国債が増発され、需給が悪化するとの懸念から米金利が上昇し、国内金利にも上昇圧力がかかる可能性があります。

◆為替 :緩やかな下落基調

米追加経済対策は土壇場で混乱した状況にあるものの、追加経済対策が消滅する可能性は低く、ドル円の方向を左右する要因とはみられません。米長期金利は依然0.9%台前半で推移しており、ドル円の下落基調に変化はないとみられます。他方、欧州中心に感染力の強い新型コロナの変異種への懸念が広がっており、リスク回避の動きも想定されます。年末年始で流動性が減少する中、感染状況によっては、上下に振らされる場面もありそうです。

◆Jリート :コロナや米上院選にらみ

国内株の上値がやや重くなる中、株式市場に比べ出遅れ感が強く、相対的に割安との見方から、Jリートを買い戻す動きが出てきたことや、新型コロナワクチンの普及などによる景気回復期待を背景に、利益確定売りに押されながらも、総じて堅調な地合いが続きました。予想分配金利回りが4%を超えるJリートが見直された格好です。しばらくは、コロナの動向や米上院選などを確認しながら、上値を探る動きが続きそうです。

来週の注目点

鉱工業生産指数(11月、速報値) 12月28日(月)午前8時50分発表

鉱工業生産指数は10月に前月比4.0%上昇し95.2(2015年=100)と、5か月連続の上昇となりました。業種別では、汎用・業務用機械工業、自動車工業などが上昇した一方、電子部品・デバイス工業などが低下しました。

世界貿易の回復傾向などを受け、11月の鉱工業生産指数も、上昇が見込まれます。ただ、今春に落ち込んだ後の反動増は一巡しつつあるため、伸びは鈍化しそうです。また、足元、国内外で新型コロナウイルスの感染が拡大しており、欧米などでは活動規制が導入されています。それらを踏まえると、鉱工業生産が新型コロナ流行前の水準に戻るまでには、かなりの時間を要する見通しです。

米ISM非製造業景況指数(12月) 1月7日(木)午後24時発表

米供給管理協会(ISM)が発表した11月の非製造業景況指数は55.9となり、2か月連続で前月よりやや減速したものの、なお、健全なペースでサービス業の活動が拡大したことを示しました。情報、金融、ネット通販、輸送などを中心に堅調さを維持しています。

しかし米国の新型コロナの新規感染者数は引き続き増加しており、米国各地で行動制限が行われています。今後もサービス業の活動ペースが減速する可能性が高く、12月の同指数は54.5を想定しています。

米雇用統計(12月) 1月8日(金)午後10時30分発表

11月の米雇用統計において、非農業部門雇用者数は前月比24万5,000人増と市場予想を大きく下回り、米労働市場の回復ペースは減速しました。また、失業率は6.7%に低下しました。

ネットショッピングや運輸・倉庫の雇用者は堅調な伸びを示す一方、製造業など多くのセクターで雇用の伸びは鈍化しています。引き続き米国の新型コロナの感染者数増の悪影響が懸念され、12月の非農業部門雇用者数は前月比8万人増程度、失業率は6.8%程度となる見通しです。

 

 

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