来週の金融市場見通し(2020年6月8日~2020年6月12日)

■来週の見通し

欧州中央銀行(ECB)は4日、新型コロナウイルス危機への対応を強化し、緊急債券購入策を6,000億ユーロ増やして1兆3,500億ユーロとするとともに、買入れ期間を6か月伸ばし2021年6月末までとしました。来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)は現状維持の見込みですが、期間が長めの金利上昇を抑制するイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)など、さらなる金融緩和策について示唆があるか注目されます。他方、全米で続く人種差別への抗議デモや米中の対立も注視していく必要があります。

◆株価 :底堅い動きを予想

日本株は、底堅い動きが予想されます。米国やユーロ圏などの経済指標が改善傾向を示しており、世界景気の回復期待が内外の株式市場をサポートする見通しです。為替が円安へ振れていることも、日本株を支える要因となりそうです。とはいえ、新型コロナウイルスの感染が再拡大する可能性が依然警戒されている上、米中関係の悪化や米国の抗議デモといった悪材料もあります。そのため、日本株が一方的に上昇するとは考えにくい状況です。

◆長期金利 :一段の上昇は限定的

米国で経済活動再開が段階的に進む中、経済指標が市場予想ほど悪化せず、景気回復が進んでいるとの見方が広がったことから、米長期金利は0.8%を上回り、3月下旬以来の水準まで上昇しました。国内でも安全資産としての国債を売る動きが強まり、長期金利はプラス圏で上昇しました。もっとも、大幅な金利上昇を日銀が望んでいないとみられることや、プラスの利回りには需要があることから、一段の金利上昇は限定的とみられます。

◆為替 : 底堅いながらも上値は限定的

主要国が段階的に経済活動を再開する中、各種経済指標は改善傾向を示しており、世界景気の回復期待が高まっています。ドルと円はともに逃避通貨として動きが拮抗しており、ドル円は動きにくいものの、徐々にリスク選好のドル売りを円売りが上回りつつあります(ドル円は若干上昇)。とはいえ、米中関係の悪化や米国内の抗議デモなどリスク要因は多く、今後の展開は予断を許しません。ドル円は底堅いながらも上値も限定されそうです。

◆Jリート :上値を探る

東証REIT指数は週央には1,734ポイントと約3か月ぶりの高値を付けたものの、その後は利益確定売りから上げ幅を縮小しました。もっとも、国内でも経済活動が再開される中、政府による1兆7,000億円規模の観光促進策への期待感も高まっています。予想分配金利回りも相対的に高い水準を維持しています。急伸している株価に比べると動きは鈍いものの、景気の底打ち観測が広がると、安心感から上値を探る動きも期待されます。

来週の注目点

機械受注(4月) 6月10日(水)午前8時50分発表 

機械受注統計によると、設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額は、3月に前月比0.4%減の8,547億円となりました。製造業が同8.2%減となった一方、非製造業は同5.3%増となり、全体としては小幅な減少にとどまりました。

4月の機械受注は、大幅な減少が見込まれます。特に、新型コロナウイルスの影響で、輸出関連の大幅減が見込まれます。また、4月7日に緊急事態宣言が発出されたため、これに伴う業績悪化や先行き不透明感の深まりを受け、設備投資意欲の顕著な後退が示されそうです。

米消費者物価指数(5月) 6月10日(水)午後9時30分発表

4月の米国の消費者物価指数(CPI)は、総合で前年比0.3%上昇と前月の同1.5%上昇から急減速しました。また、食品とエネルギーを除くコアCPIも同1.4%上昇と2011年以来の低い伸びとなりました。

新型コロナウイルスの感染拡大が物価に大きな影響を及ぼしています。食品価格が上昇する一方、衣料品、航空運賃、ホテル宿泊費などが過去最大の下げとなりました。足元では段階的に経済活動が再開されているとはいえ、個人消費に力はありません。5月は総合で前年比0.2%の上昇、コアは同1.3%の上昇を想定しています。

 

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