来週の金融市場見通し(2020年5月25日~2020年5月29日)
■来週の見通し
22日に始まった中国の全国人民代表大会(全人代)では、米国の反発が予想される香港の新たな国家安全法(反政府活動の取り締まり等)の導入が表明されました。米国は、15日に商務省が中国の華為技術(ファーウェイ)への半導体輸出規制を強化する措置を発表、また米議会が中国企業による米株式市場への上場を制限する法案を審議するなど、中国への強硬姿勢を強めていますが、香港情勢が米中対立に加わった格好です。国内では緊急事態宣言解除後の、経済活動再開の進展を確認したいところです。
◆株価 :弱含みの展開を予想
日本株は、弱含みの展開が予想されます。3月下旬以降、日経平均株価は大きく上昇したものの、世界景気の回復期待が先行し過ぎている面もあります。新型コロナウイルスについては、感染再拡大への警戒感が各国で根強く残っています。そのため、株価のさらなる上値を追う動きにはなりにくく、売り圧力が優勢となる場面が増えそうです。ただ、国内の緊急事態宣言が段階的に解除されているため、日本株の大幅下落も考えにくい状況です。
◆長期金利 :ゼロ%付近でのもみ合い継続
米連邦公開市場委員会(FOMC、4月開催分)議事要旨で、長期金利の上昇を抑えるための国債購入などが議論されたことを受け、低金利が長期化するとの見方が広がっていること、また米中対立への警戒から、内外の金利は上昇しにくい状況が続きそうです。国内の4月の全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除く総合指数が前年同月比で0.2%下落と、2016年12月以来のマイナスとなりました。長期金利は低位での推移が続きそうです。
◆為替 : 方向感見出しにくい
足元、ドルと円はともに逃避通貨として市場で意識されていることから動きは拮抗しており、ドル円は方向感を見出しにくい状況です。主要各国は段階的に経済活動を再開していることから総じてリスク選好の動きが優勢ですが、米中対立激化の懸念は強く、展開によってはドル円は狭いレンジ内で細かく振らされそうです。とはいえ、米長期金利の上昇余地が乏しいことから、中長期的には緩やかながらドル安円高が進みそうです。
◆Jリート :上値を探る
東証REIT指数は5日続伸しました。国内の経済活動が徐々に再開される中、ホテル・商業系リートに見直し買いが入ったほか、相対的に高い分配金利回りに着目した買いが押し上げた模様です。内外の中央銀行が一段と金融緩和姿勢を強める中、低金利が長期化するとの観測は安心材料です。4%台の予想分配金利回りは若干下振れしても、相対的には高い水準です。利益確定売りに押されながらも、上値を探る展開となりそうです。
■来週の注目点
鉱工業生産指数(4月、速報値) 5月29日(金)午前8時50分発表
鉱工業生産指数は3月に前月比3.7%低下し、95.8(2015年=100)となりました。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による影響で、特に自動車や生産用機械において低下が顕著でした。
経済活動の制限による世界景気の後退は、4月以降に加速しました。国内でも非常事態宣言が4月上旬に発出されたことに伴い、生産や消費が大幅に落ち込んでいる模様です。そのため、4月の鉱工業生産指数も低下が見込まれ、5月も低下が続く可能性が高いとみられます。
米個人消費支出(4月) 5月29日(金)午後9時30分発表
3月の米個人消費支出(PCE)は、前月比7.5%減と過去最大の落ち込みとなり、予想を大きく下回りました。また、PCE価格指数は総合で前年比1.3%上昇と前月の同1.8%上昇から急低下しました。
新型コロナウイルス感染拡大に伴う広範な経済活動の停止や失業が、米経済のけん引役であった消費に多大な影響をもたらした形です。米国では各地で段階的な経済活動の再開が進みつつあるものの、引き続き消費は停滞しており、今後も中長期的に同指数の低迷が想定されます。
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