来週の金融市場見通し(2020年5月11日~2020年5月15日)

■来週の見通し

米雇用情勢の大幅な悪化や国内の緊急事態宣言の延長などは重しながら、欧米でロックダウン(都市封鎖)を段階的に解除する動きが広がっており、経済活動再開への期待から投資家心理が改善しています。もっとも、恐怖指数とも呼ばれ投資家の不安心理を表すVIX指数は低下していますが、平時の水準を大きく上回ったままです。他方、第1段階の貿易合意の履行をめぐる米中対立への警戒はやや後退しています。新型コロナウイルスの感染や経済活動再開の動向などを確認しながら方向感を探ることになりそうです。

◆株価 :弱含みの展開を予想

日本株は、弱含みの展開が予想されます。日経平均株価は3月につけた安値から約2割上昇し、2万円台を回復しました。ただ、最近の株価上昇は、世界的な経済活動再開に対する期待に支えられているものの、新型コロナの感染終息には程遠いのが実状です。そのため、日本を含む世界の景気回復は、当分の間、緩慢なものにとどまる可能性が高いとみられます。それらが明らかになるにつれ、日本株の下落場面が増える見通しです。

◆長期金利 :ゼロ%付近でのもみ合い

長期金利はマイナス圏での動きが続きましたが、8日にはゼロ%まで戻りました。米国の経済活動再開への期待が広がったことや、一旦浮上した米連邦準備制度理事会(FRB)によるマイナス金利政策の導入観測がやや後退したことが長期金利を押し上げた模様です。国内では、大型経済対策に伴う国債増発で需給悪化が懸念されますが、日銀が国債を積極的に買い入れる姿勢を表明していることから、一段の上昇は限定的になりそうです。

◆為替 : レンジ内の動きが継続

主要各国で新型コロナの感染拡大がピークアウトしたとの見方から、それぞれ段階的な経済活動再開の動きが見られ、株価が底堅い動きを見せていることから、基本的にはドル円の下値は限られると思われます。とはいえ、米長期金利の上昇余地は極めて限定的であり、ドル円の上値も限られるでしょう。しばらくは安全通貨としてのドルと円の綱引きが続くと思われることから、レンジ内で動きづらい展開が継続するでしょう。

◆Jリート :上昇余地を探る

東証REIT指数は8日に、3月下旬以来となる1,600ポイント台を回復しました。4月末の東京都心のオフィス空室率は2か月連続で上昇も、1.56%と非常に低い水準です。平均賃料は76か月連続で上昇。予想分配金利回りの下振れ懸念はくすぶるものの、内外の中央銀行が緩和姿勢を強め、低金利が長期化する中、相対的に高い水準を維持するとみられます。新型コロナの感染動向などを確認しながら、上昇余地を探る展開になりそうです。

来週の注目点

景気ウォッチャー調査(4月) 5月13日(水)午後2時発表 

景気ウォッチャー調査の現状判断DIは、3月に前月差13.2ポイント低下の14.2となりました。比較可能な2001年以降で最も低いDIであり、新型コロナの感染拡大による影響の大きさを示しています。

4月のDIは、さらなる低下が見込まれます。4月7日に緊急事態宣言が出され、飲食・旅行関連などが壊滅的な打撃を受けています。世界景気の悪化に伴い、製造業の景況感も大きく悪化しています。緊急事態宣言は1か月延長されたため、5月も極めて厳しい状況となりそうです。

米消費者物価指数(4月) 5月12日(火)午後9時30分発表

米国の消費者物価指数(CPI)は、3月に総合で前年比1.5%上昇と予想を下回るとともに、前月の同2.3%上昇から減速しました。また、食品とエネルギーを除くコアCPIも同2.1%上昇と予想を下回りました。新型コロナ感染拡大が同指数に大きな影響を及ぼしました。

引き続き経済活動が制限される中、個人消費が低迷しており、今後も航空運賃、宿泊費、ガソリン価格、新車価格など広範囲にわたって下落が想定されることから、同指数は中長期的に低迷すると思われます。4月は総合で前年比0.4%の上昇を想定しています。

 

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