来週の金融市場見通し(2019年9月30日~2019年10月4日)
■来週の見通し
トランプ米大統領が国連総会で中国の不公正な貿易慣行を批判し、米中対立への警戒感が一旦広がりましたが、その後トランプ氏が「早い時期に合意に至る可能性がある」と発言、また中国が相当量の米農産物を購入したことを受け、警戒感が後退するなど、米中の動向に振らされる展開が続いています。米中は10月10、11日に閣僚級の貿易協議を開く予定です。米中にらみの状況が続きますが、消費増税の影響に加え、日銀短観、米雇用統計、中国の購買担当者景気指数など、内外の経済指標も確認したいところです。
◆株価 :方向感を欠く展開か
日本株は、方向感を欠く展開が予想されます。米中貿易協議を控える中、その結果を見極めるまでは、様子見姿勢が広がりそうです。製造業を中心とした世界経済の減速、および米欧の金融政策についても、不透明な状況が続くとみられます。国内では10月からの消費税率引上げによる個人消費への影響に関し、大勢が判明するまでには数か月を要する見込みです。これらを背景に、日経平均株価は2万2千円付近で一進一退となる見通しです。
◆長期金利 : 一進一退
黒田日銀総裁が、リスク予防的な対応を意識すると述べたことを受け、追加緩和が意識されたこと、またトランプ氏の弾劾調査開始を受けて、長期金利はマイナス0.265%まで低下しました。ただ、日銀が国債買い入れオペを減額し、金利低下をけん制したことから、長期金利は若干上昇する動きに。マイナス金利の深掘りなど追加緩和が意識される中、日銀は過度な金利低下を抑制していることから、動きにくい状況が続きそうです。
◆為替 : レンジ取引継続
次の米国の利下げについては予断を許さず、今後の動向次第と思われますが、米長期金利の上昇は限定的でしょう。したがってドル円の上値は重いものの、8月に104円台まで下げた後の調整が続いており、下も攻めにくい状況です。米中は10月10,11日に閣僚級の貿易協議を予定しているものの、その帰すうは不透明であり、引き続き同協議の関連情報に振らされるでしょう。来週もレンジ内で方向を模索する展開となりそうです。
◆Jリート :スピード調整の可能性も
東証REIT指数は堅調な動きが継続し、週末には一時2,188ポイントまで上昇しました。日銀が10月末の次回会合で、追加緩和に踏み切るとの見方が広がっており、長期金利はマイナス圏での動きが継続することが見込まれる一方、Jリートの予想分配金利回りは3.5%弱と引き続き相対的に高い水準です。利回りに着目した買いがJリートを押し上げていますが、2007年8月以来の水準まで上昇しており、スピード調整には注意が必要です。
■来週の注目点
鉱工業生産指数(8月、速報値) 9月30日(月)午前8時50分発表
鉱工業生産指数は7月に前月比1.3%上昇し、102.7(2015年=100)となりました。ただ、大幅に低下した6月(同3.3%低下)の反動としては、鈍い回復にとどまりました。そのため経済産業省は、「生産は一進一退」との基調判断を据え置きました。
8月分については、小幅な低下が見込まれます。特に中国向けの輸出が低迷している上、米中貿易摩擦をめぐる不透明感もあり、輸出の多い品目を中心に、企業は生産に関し慎重な姿勢を維持しています。また、10月の消費税増税に伴う駆け込み需要に向けた増産の動きも特段みられず、鉱工業生産への影響は限定的となりそうです。
米雇用統計(9月) 10月4日(金)午後9時30分発表
8月の米雇用統計において、非農業部門就業者数は前月比13万人増と市場予想を下回りましたが、今後のインフレ動向を占う上で重要な平均時給は前年比3.2%上昇と、市場予想を上回る強めの結果となりました。失業率は前月同様3.7%と半世紀ぶりの低水準が続いています。
賃金の伸びは継続的に前年比3%程度と堅調で、個人消費は米景気を下支えすると思われます。しかし雇用者数の伸びは明確に減速しつつあり、米中貿易摩擦をめぐる不確実性と世界経済の減速が重しになっています。9月の非農業部門就業者数は前月比14万人程度の増加、平均時給は前年比3.2%程度の上昇が想定されています。
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