来週の金融市場見通し(2019年9月9日~2019年9月13日)

■来週の見通し

米中が1日、互いに追加関税を発動し、景気下押し懸念が一旦強まりました。ただ、香港政府が逃亡犯条例改正案を撤回することを表明、英議会が欧州連合(EU)離脱の再延期を求める法案を可決、また米中が10月初旬に閣僚級貿易協議を開くことで合意したことを受け、懸念材料が一気に後退しました。しばらくは、香港情勢や閣僚級協議に向けた米中の事務レベル協議の動向、消費者物価指数などの米経済指標を確認しながら、17~18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、米中閣僚級協議を待つことになりそうです。

◆株価 :底堅い動きを予想

日本株は底堅い動きが予想されます。米中の貿易協議再開が決まり、これに伴う市場心理の好転が株式市場を支える見通しです。英国などの政治リスクがひとまず和らいだことなどから一旦円安へ振れていることも、日本株の追い風となりそうです。もっとも、米中貿易摩擦の行方は依然として不透明であるほか、10月の消費税増税などに伴う国内の景気減速懸念も踏まえると、日本株が一方的に上昇する展開は考えにくい状況です。

◆長期金利 : 低位もみ合い

日銀は、9月の長期国債買入れオペの運営方針で、残存期間5年超10年以下の購入額のレンジを引き下げたのに続き、残存期間10年超25年以下の国債買入れを減額し、長期、超長期債の利回り低下を抑制する姿勢を示しました。また、投資家心理が改善する中、国債への逃避需要が後退していることも、長期金利の低下を抑えそうです。もっとも、内外の中央銀行が緩和姿勢を強める中、長期金利の上昇も限定的とみられます。

◆為替 : レンジの中、方向を模索

米中貿易摩擦問題については、10月初旬に閣僚級の協議が行われる見通しとなったことから、ドル円は若干底堅い動きを見せています。しかしその行方は予断を許さず、また、9月のFOMCにおいてもう一段の利下げが想定されることから、ドル円の上値は限定的です。世界景気の減速懸念は強く、リスク回避的な円買いが出やすい状況です。とはいえ、日米株価が堅調に推移すれば下値も限定的でしょう。

◆Jリート : 上昇余地を探る

東証REIT指数は、5日には2007年8月以来の2,100ポイントを回復しました。長期金利の低下は一服したものの、マイナス0.2%を下回る水準で推移する中、相対的に高い分配金利回りに着目した買いに加え、香港情勢、英国のEUからの「合意なき離脱」、また米中対立に対する警戒感が後退し、投資家心理が改善したことも、Jリートを押し上げた模様です。引き続き、利益確定売りを警戒しながら、上昇余地を探る展開になりそうです。

来週の注目点

景気ウォッチャー調査(8月) 9月9日(月)午後2時発表 

景気ウォッチャー調査の現状判断DI(季節調整値)は、7月に前月比2.8ポイント低下の41.2と、3か月連続で低下しました。天候不順による夏物衣料の販売不振などが、景況感の悪化要因となりました。

今回発表される8月分でも、景況感の低迷が示される見込みです。家計部門については、10月の消費税増税への警戒感が重しとなりそうです。また、企業部門については、米中貿易摩擦などを背景とした輸出の鈍化や設備投資の減速が、当面の景況感を圧迫する見通しです。

米消費者物価指数(8月) 9月12日(木)午後9時30分発表

米国の消費者物価指数(CPI)は、7月に総合で前年比1.8%上昇、食品とエネルギーを除くコアCPIは同2.2%の上昇となり、物価上昇がようやく根付き始めた状況を示唆しました。総合ではガソリン価格が前月の落込みから回復し、コアCPIでは居住、医療、輸送等幅広い範囲で上昇しています。

米中貿易協議の行方は予断を許さず、世界景気に不透明感が広がるものの、インフレ指標がやや堅調な動きをみせ始めていることから、今後のすう勢に注目です。8月は総合で前年比1.7%、コアCPIで同2.3%程度の上昇を想定しています。

 

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