楽天証券投資Weekly 2013年12月27日 第69号

2013/12/27

マーケットコメント:日経平均は上放たれる。掉尾の一振へ。

日経平均は16,100円台へ。上放たれる:2013年12月24日の週の株式市場は、前週に続き順調に上げる展開となりました。

日経平均は、12月24日に5月23日に付けたザラ場高値15,942.60円を抜き、ザラ場で16,029.65円の年初来高値を付けました。その後も強い相場が続き、25日は前日比120.66円高、26日は164.45円高となり、日経平均は26日終値で16,100円台に乗せました。チャート(グラフ1)を見ると、今年の高値をザラ場で抜いたことで、日経平均が上放たれたことがわかります。株式市場は新しい展開に入ってきました。

特に26日はほぼ全面高となりました。日経平均への影響度が大きいソフトバンクファーストリテイリングが上げたほか、先週「来年の投資テーマ」でお伝えした自動車(トヨタ自動車本田技研工業富士重工業マツダ日野自動車デンソーなど)、民生用電機、電子部品(パナソニックソニー村田製作所など)が、円安進行に伴い上げました。しばらく動きのなかったトヨタ自動車が下値を切り上げ、富士重工業は今年の高値を付けました。

不動産、建設などの内需関連、ガンホー・オンライン・エンターテイメントなどのソーシャルゲーム関連や新興市場株も上げました。

また、27日は円安が進行し、一時1ドル=105円を付けました。27日の日経平均は、今週の上昇の反動でやや下げる展開も見られましたが、後場に入り切り返し、前日比4.50円高の16,178.94円で引けました。

金融、為替、企業業績のいずれを見ても、今後の株価の堅調を期待させるものです。日経平均月足(グラフ2)は長期抵抗線を下から上に突き上げています。今後のチャート上の節目が18,000円、20,000円にあり、来年2014年は先週指摘したように、18,000~20,000円を目指す展開が予想されます。

グラフ1 日経平均株価:日足

グラフ2 日経平均株価:月足


グラフ3 ドル円レート:日足


来年はアベリスクも:株式市場が好調に上げている一方で、来年のリスクも見えてきました。

一つは、財政の問題と金利の問題です。来年度予算は過去最高の規模になりそうです。今回の予算には、消費税増税の日本経済に対する悪影響を防ぐものや公共投資の増加も含まれています。今回は、それらに対しては必ずしも反論できません。例えば、公共投資の中には、異常気象のために頻発している洪水を防ぐための治山治水や道路、橋、トンネルなどのインフラの補修も含まれており、それらは否定することが難しいものです。

ただし、全体として来年度予算の規模が過去最高になったということは、日本政府には財政再建の熱意があるのかという懸念を株式市場にもたらす可能性があります。27日に発表された全国消費者物価指数を見ると、「生鮮食品を除く総合」が9月前年同月比0.7%増、10月0.9%増、11月1.2%増とじりじり上昇しています。これと財政拡大を考えると金利上昇圧力が起こる可能性があります。財政と金利の関係には注意が必要になりそうです。

また、来年度予算からは家計の負担も増えることになります。これが安倍政権の支持率にどう影響するか、注目したいと思います。

もう一つは、安倍首相の態度が日本と国際社会との関係に様々な軋轢をもたらし、それが日本経済と株価に悪い影響を与える可能性です。特に、安倍首相の存在が日米関係に問題を引き起こす可能性があると思われます。

国際政治、経済、安全保障の各分野で日本が中国と渡り合うためには、日本にはアメリカの後ろ盾がどうしても必要なのは自明です。ところが、アメリカの産業界は決して「日本寄り」ではありません。GM、フォード、キャタピラーなどの大手製造業、マイクロソフト、インテルなどのIT関連企業にとって、中国は日本よりも重要な市場です。人口13億人、名目GDPは既に日本を上回り、年率7%成長している国と、人口1.2億人で成長率1~2%の日本と、商売の面でどちらが重要か、これも自明でしょう。

アメリカは自由と民主主義の国ですが、同時にお金の国、すなわち資本主義の国でもあるのです。安倍首相が、アメリカが全く無条件に日本を支援すると考えているとすれば、それは思い違いでしょう。安倍首相がもし思い違いをしているとすれば、それが重要な問題になる可能性があります。

 

来年の投資テーマ:来年2014年の投資テーマについて、先週に続き考えてみたいと思います。

不動産:東京の再開発ブームは2014年以降も続くと思われます。新規の大型再開発の発表、着工も続くと思われます。

注目される地域は、まず品川です。リニア中央新幹線の着工が来年度中になる見込みであり、起点となる品川と名古屋では、来年度中に工事が始まると思われます。

加えて、品川では、田町-品川間にあるJR東日本の田町車両センターが、東北線、常磐線、高崎線の東京駅乗り入れによって不要になるため、跡地に大型再開発が計画されています。土地の所有者は東日本旅客鉄道(JR東日本)ですが、JR東日本だけでは無理なほど広大な土地が空き地になるため、複数の大手不動産会社(三菱地所三井不動産住友不動産など)が参画するビックプロジェクトになると思われます。

また、品川の近くでは、三井不動産が北品川再開発計画を実行中です。大崎駅近くの旧国際自動車教習所跡地は住友不動産が購入しており、来年中にも再開発計画を開始すると思われます。

次に、八重洲、京橋です。八重洲には三井不動産が築50年前後の大型ビルを2棟所有しており、これが周辺の雑居ビルとともに再開発される可能性があります。再開発が実現すれば大型の高層ビルとなる可能性があり、八重洲は現在とは様相が変わるでしょう。

西新宿も重要です。西新宿にある木造住宅の密集地に、2014年1月、フジタ三菱地所が参画する事業体が地上60階建ての高層マンションを着工します。このような木造住宅と雑居ビルの密集地は従来再開発が難しかったのですが、地元地権者と大手不動産会社、ゼネコンが話し合って組合を作り再開発となったものです。土地の価値が上がるため、地元では歓迎されていると聞きます。新宿を地盤とする住友不動産もこの地域で動き出しています。

このほか、渋谷では東京急行電鉄東急不動産東日本旅客鉄道が、2013年から渋谷再開発を開始しました。

これらの大型再開発ブームが続くことから、2014年も東京の地価は持続的に上昇すると思われます。地価の持続的上昇は、不動産株だけでなく、株式市場に対する有力な支援材料です。

グラフ4 中古マンションの価格推移

建設:東京における大型不動産ブーム、東北の被災地における復興事業の本格化、異常気象による被害を防ぐために全国で活発になっている洪水対策などの土木事業、道路、橋、トンネルなどインフラの補修、それに東京オリンピック関連の施設建設とインフラ整備、来年度からのリニア中央新幹線の着工が重なって、大型の建設ブームが到来しています。

一方で、人手不足による建設労務費の上昇、鉄鋼などの建設資材費の上昇によって、昨年までに受注したビル、マンションなどの建築工事の採算が悪化しており、これが大手ゼネコンの今上期や下期の業績悪化に繋がっています。

準大手以下の建設会社(熊谷組西松建設安藤・間など)は、工事規模が相対的に小さく、過去受注した案件の竣工が進んでいるため、業績は概ね改善途上にあります。問題は、大手ゼネコンの業績底入れがいつになるのかということです。大手ゼネコンでは、過去2年間に受注した採算の悪い案件の完工がピークに達するのが、2014年5月ごろになる見込みです。これを過ぎれば、労務費、資材費の更なる高騰がなければ、大手ゼネコンの業績は回復に向かうと思われます。即ち、2014年3月期4Qから2015年3月期1Qにかけてが大手ゼネコン(大成建設大林組鹿島建設清水建設)の業績底入れ時期となると思われます。

また、現在受注している案件は、いずれも労務費、資材費の上昇を価格に転嫁しています。建設会社では、明らかに採算が悪い案件は、見積もりもとらずに断っているとも聞きます。今以上のペースで資材費、労務費が上昇しなければの話ですが、建設会社の業績は来期(2015年3月期)は改善する期待が強くなっています。

大手ゼネコンの中でも、採算管理が厳しく業績の水準が比較的高い大成建設、黒四ダムを初め数々の大型トンネル工事、難工事をこなし、トンネル工事の技術に定評がある熊谷組(大手ゼネコンの間では、トンネルの難工事は熊谷組にまかせろと言われています)に注目したいと思います。特に、リニア中央新幹線は重要で、大手ゼネコンと熊谷組のトンネル工事技術がなければ、リニア中央新幹線の工事は難しくなります。リニア中央新幹線は建設、車両技術、超伝導技術、制御技術など様々な面で日本の技術革新に繋がると思われます。この方面からもリニア中央新幹線の関連企業には注目したいと思います。

エンタテインメントもしくは優待銘柄:そろそろ2014年3月末の株主優待を考えながら投資する時期でもあります。

株主優待には、優待商品を換金するだけでなく、自分で楽しんでその会社に対する理解を深める楽しみがあります。例えば、音楽会社や映画会社の優待には、映画のチケット、ライブの優先購入権などがあり、体験してみると面白いものがあります。優待目当てに長期投資や優待取りの短期投資をする投資家も少なからずいるようです。

特に、エンタテインメント会社は、株主優待にも特徴があります。アミューズ(芸能プロダクション大手)は毎年変わりますが、2013年はミュージカルの招待券とライブの抽選券でした。エイベックス・グループ・ホールディングスは、例年8月に開催されるa-nation(エイベックス所属のアーティストが集まるライブ)の優先予約制度、株主限定CD、DVDなどです。サンリオはサンリオピューロランド、ハーモニーランドの入場券やオリジナルグッズ、オリエンタルランドはディズニーランドまたはディズニーシーのワンデーパスポートです。

業績を見ると、アミューズは、今期は減益見込みですが、所属アーティストのライブが活発になる見込みなので、来期(2015年3月期)は増益転換が予想されます。サザンオールスターズのライブが今期から来期にかけて増える見込みです。福山雅治、Perfumeなどの大物、人気アーティストのライブも活発です。ONE OK ROCK(ワンオクロック)、BABYMETALなどの若手も出ています。PERが8倍台と安いため、長期投資にも向いた銘柄と思われます。

 

2014年3月末決算銘柄の株主優待情報
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/search/hp_search/hps_mar.html

12月30日の週のスケジュール:アメリカでは12月31日に、10月のS&Pケース・シラー住宅価格指数、12月の米消費者信頼感指数が公表されます。年明け1月6日にはFOMC議事録(11月15、16日開催)が公表されます。8日は12月のADP雇用統計、10日は12月の雇用統計が公表されます。

年明け1月10日の12月のアメリカ雇用統計に注目したいと思います。

経済カレンダー
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/calendar/

表1 楽天証券投資WEEKLY


グラフ5 信用取引評価損益率と日経平均株価


グラフ6 東証各指数(12月26日まで)を2012年11月14日を起点(=100)として指数化


<年末のご挨拶>

今年1年間、楽天証券投資Weeklyをお読みいただきありがとうございました。

来年2014年もどうぞよろしくお願い致します。

よいお年をお迎えください。

楽天証券株式会社
楽天証券経済研究所所属のアナリスト今中能夫による今週1週間の国内株式市場の情報がつまった週刊レポートです。今後の相場の見通し、決算発表情報、個別銘柄の短期株価見通しなどを分かりやすく解説しています。
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