楽天証券投資Weekly 2013年11月08日 第62号
マーケットコメント:悪い決算もあるが、よい決算のほうが多い。
5日の週も軟調な展開が続く:2013年11月5日の週の株式市場は、引き続き三角保合いの狭いレンジの中を上下運動する展開となりました。前週後半の軟調な展開の反動で週初は反発局面があったものの、7日は決算と政策に対する不満から下落しました。また、7日に発表されたアメリカの7-9月期実質GDPが前期比2.8%増(季節調整済み)と予想よりも良い数字だったものの、個人消費が減速していたため景気の先行きに不安感が台頭し、7日のニューヨークダウは前日比152.90ドル安となりました。8日の日経平均はこれを受けて急落し、14時30分現在前日比約150円安、14,000円台に入っています。
ただし、8日の急落で、日経平均は三角保合いの下限である14,000円割れの水準に近付いてきました。後述のように2014年3月期2Q決算の内容を見ると、キヤノン、コマツ、ソニー、日産自動車のような株式市場の期待を下回った会社もある一方で、日産自動車以外の自動車各社、トヨタ自動車、本田技研工業、富士重工業、マツダ、日野自動車などは市場の期待から大きく離れない実績と通期見通しを示しました。電機では、パナソニックの業績回復がサプライズだったと思われます。建機も、日立建機、タダノ、加藤製作所が好決算を出しました。決算が悪かった会社よりも良かった会社のほうが多い状態であり、業績好調企業に押し目買いを入れてもよい水準に達しつつあるのではないかと思われます。日経平均の反発を期待してもよい水準に差し掛かっているのではないかということです。
今後のスケジュールを見ると、日本では11日に10月の景気ウォッチャー調査、13日に9月の機械受注、14日に7-9月期GDP第1次速報が発表されます。アメリカでは、8日に10月の雇用統計と11月のミシガン大学消費者信頼感指数、15日に11月のニューヨーク連銀製造業景気指数が発表されます。8日のアメリカ雇用統計に注目したいと思います。
グラフ1 日経平均株価:日足
経済カレンダー
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/calendar/
表2 楽天証券投資WEEKLY
2014年3月期2Q決算動向:前週に続き、2014年3月期2Q決算の内容を見ていきたいと思います。
自動車:トヨタ自動車の2Q決算は円安、車種構成の改善、原価低減などが奏功し、好調でした。売上高は前年比16.2%増となり、営業利益は同73.8%増、当期純利益は70.0%増でした。当期純利益は前年比1,805億円増の4,384億円になりましたが、この増益要因の中で、円安によるものが2,800億円、原価改善努力が700億円、営業面の努力が100億円でした。一方で、諸経費の増加(研究開発費、労務費の増加など)が1,300億円あり、これが減益要因となりました。販売台数は2Qが250.1万台(前年同期は243.1万台)で、日本がエコカー補助金の反動で減少し、タイ、インドネシアが減少したことからアジアも減少しましたが、北米、欧州が増加し、その他地域(中近東、アフリカ、オセアニアなど)も増加しました。
会社側では、通期見通しを上方修正しました。年度平均レートを1Q決算時の1ドル=92円から97円に、1ユーロ=122円から130円に修正し、営業利益を1Q決算時の1兆9,400億円から2兆2,000億円に上方修正しました。実際には、日本では消費税増税前の駆け込み消費の可能性があることと、新車の売れ行きが良いこと、アメリカもピックアップトラックや中型車中心に順調に伸びていることなどから、さらに上乗せの可能性があります。また、下期前提レートが1ドル=95円、1ユーロ=130円なので、足元の1ドル=97~98円台、1ユーロ=131~132円が続けば、400~600億円程度の営業利益上方修正要因が発生することになります(営業利益に対する為替感応度は1ドル1円で年間400億円、1ユーロ1円で年間40億円)。2008年3月期の過去最高営業利益2兆2,704億円が射程内に入っていると思われます。
一方で、日産自動車の2Q決算は減益決算でした。2Q売上高は16.4%増だったにも関わらず、営業利益は18.7%減でした。特に問題なのが北米で30.0%増収、28.3%減収、アジアも12.0%営業減益、欧州とその他地域は赤字転落しました。上期全体で見ると、為替と購買コスト低下に助けられていますが、販売台数の減少と車種構成の悪化、販売費、研究開発費、生産コストなどの増加が減益要因となりました。
結局、昨年から社運をかけて進めてきた全世界で9工場を同時に新設、拡張するという野心的な計画がうまくいっていないのです。そのために、人気があるにも関わらず生産台数が足りない車がある一方で、目論見通り売れない車が出ているようです。販売費の増加が営業減益の大きな要因であり、1Qに円安メリットを使って北米で値下げを行っていることを考えると、商品力が低下している可能性は否定できません。一度下がった商品力は簡単には向上することができません。
通期営業利益見通しも、7,000億円から6,000億円(前年比14.6%増)に下方修正されました。更なる下方修正の可能性もあるため、日産自動車の先行きには注意が必要です。
電子部品:電子部品大手の業績は好調でした。スマートフォン向けに加えて自動車向けが重要になってきたことが確認できました。
村田製作所の2Q営業利益は425億円(前年比2.3倍)になりました。通信向け(主にスマートフォン向け)が前年比38.2%増と大きく伸び、コンピュータ及び関連機器向け(タブレットPC向けなど)、カーエレクトロニクス向け(エンジン制御、カーナビゲーション向けなど)も伸びました。会社側の通期営業利益見通しは従来の1,000億円から1,200億円(前年比2.0倍)に上方修正されました。
京セラの2Q営業利益は582億円(前年比2.2倍)となりました。セラミックパッケージ、太陽電池、電子部品、スマートフォンが好調でした。通期営業利益見通しは、1,400億円(前年比82.0%増)から変更ありません。
ヒロセ電機も、スマートフォン向け、自動車向けコネクタが好調でした。上期営業利益は前年比59.2%増、通期営業利益見通しは250億円から300億円(前年比43.0%増)へ上方修正されました。
総合商社:三菱商事の2Q純利益は1,327億円(前年比47.4%増)と好調でした。エネルギー(LNG、原油の取り扱い)、金属(鉄鉱石、原料炭、銅など)、機械(自動車など)をはじめほぼ全分野が増益でした。円安も寄与しました。2014年3月期通期の会社側業績予想は当期純利益4,000億円(11.1%増)で変更ありません。
伊藤忠商事も、2Q当期純利益は878億円(前年比22.6%増)でした。同社も繊維、機械、金属、住生活・情報などほぼ全分野で増益でした。通期は2,900億円(3.5%増)で修正はありません。
三井物産も2Q純利益は714億円(前年比11.7%増)でした。上期で見ると、金属が減益となったものの、エネルギーがLNG、原油の寄与で増益となりました。通期純利益見通しは、3,700億円(20.2%増)でこれも変更ありません。
総合商社の業績は日本企業の縮図と言えます。資源価格の低下が業績に響いてはいますが、それを数量で補い、自動車、機械、生活分野などの非資源部門が好調でした。円安も寄与しました。通期の増益の確度は高いと思われ、PER、PBRの低さが注目されるところです。
表3 2014年3月期2Q決算発表予定日(主要なもの)
グラフ3 信用取引評価損益率と日経平均株価
グラフ4 東証各指数(11月7日まで)を2012年11月14日を起点(=100)として指数化
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