楽天証券投資Weekly 2013年2月1日 第22号
-特集:2013年3月期3Q決算1 良いものはよいが、そうでないものもある-
マーケットコメント
2013年1月28日の週の株式市場は、引き続き強い展開となり、日経平均株価は1月30日に終値ベースで11,000円台に乗せました。日経平均は1月15日に10,900円台を付けた後、高値持ち合いとなっていましたが、政府要人の円安発言、政府の来年度予算の概要発表などのイベントをこなし、28日の週に入って再び強含んできました。
チャートを見ると、前回の上昇局面である2012年1月16日安値8,352.23円から2012年3月27日の高値10,255.15円まで、約1,900円上昇しました。これを今回の上昇局面の起点、2012年11月14日安値8,664.73円に当てはめると10,500円台となり、すでに昨年のラインをクリアしています。また、前回の2012年3月高値から2012年6月4日安値8,238.96円まで約2,000円下落しました。これが今回倍返しするとすれば、次の目標は12,200円台となります。グラフ2のように、12,000円前後にはチャートの節目もあります。実際、今のマーケットは早期の12,000円台乗せを達成しそうな勢いです。
この強い相場の中で、21日の週から2013年3月期3Q決算の発表が始まりました。これまでに出た決算を見ると、良い決算もあれば良くないものもあります。ちなみに良い決算の筆頭は自動車です。株式市場はこれらの決算の多くを今のところ前向きに織り込んでいるように見られますが、素直に悪い決算を織り込んでいるケースもあります。後述の任天堂の下方修正、村田製作所の業績見通し据置、京セラ、TDKの下方修正では、任天堂、京セラ、TDKが売られて、村田製作所の株価も軟化しています。
一方で、2013年3月期業績見通しの上方修正を公表したダイハツ工業、日野自動車、デンソーが買われており、ここから好決算が予想されるトヨタ自動車も買われています。純利益見通しの小幅下方修正を発表した本田技研工業も円安メリットを評価して売られることにはなっていません。
先週、ポートフォリオの中身を再検討する時期ではないかと書きましたが、今もその考えは変わっていません。円安が継続しているため、円安メリットが見込まれる輸出関連株に内需株よりも投資妙味があると思われます。ただし、これまで出た決算を見ると、輸出関連の全てに円安メリットがあるわけではありません。同時に内需関連の全てが今後予想される輸入物価上昇のデメリットを大きく受けるわけではないと思われます。個別企業の吟味が必要な状況と思われます。
表1:楽天証券投資WEEKLY
グラフ1 日経平均株価:日足
グラフ2 日経平均株価:月足
グラフ3 信用取引評価損益率と日経平均株価
グラフ4 円/ドルレート:日足
グラフ5 円/ユーロレート:日足
マーケットスケジュール
2013年2月4日の週のマーケットスケジュールを概観します。
日本では、2月7日に12月の機械受注が公表されます。また、8日に1月の景気ウォッチャー調査、12月の国際収支が公表されます。
アメリカでは、4日に12月の製造業新規受注が公表されます。5日は1月のISM非製造業景況指数が公表されます。7日には、イングランド銀行、欧州中央銀行の政策金利が公表されます。8日は12月のアメリカ貿易収支が公表されます。
1月の景気ウォッチャー調査と12月のアメリカ製造業新規受注に注目したいと思います。中身次第では一段の円安の可能性があります。
経済カレンダー
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/calendar/
特集:2013年3月期3Q決算1 良いものはよいが、そうでないものもある
これから数週間、2013年3月期3Q決算を発表した企業についてコメントします。
小松製作所:3Q営業利益は前年比33%減の392億円でした。中東、ロシア等のCIS、オセアニアは好調でしたが、中国での建機販売が回復せず、インドネシアの鉱山機械販売も石炭価格下落によって悪化しました。会社側は通期営業利益見通しを2620億円から2300億円(前年比10%減)に下方修正しました。ただし、下方修正後の4Q営業利益見通しは795億円(前年比23%増)となっており、円安メリット、インドネシアの鉱山機械の回復などを期待しています。株価も会社側の4Q予想を見て決算発表後強含んでいますが、4Qの見方は少々強気な見方ではないかと思われます。
任天堂:3Q営業利益は黒字ではあったものの、233億円(前年比43%減)と前年同期の水準を大きく下回りました。3DSのハード、ソフトの売上高がクリスマス商戦で会社予想を下回り、Wii Uも勢いが続きませんでした。3DSは特に欧米で振るいませんでした。会社側はこれを受けて通期業績見通しを下方修正しました。通期営業利益は前回見通し200億円に対して200億円の赤字となる見通しです。ただし、経常利益は100→200億円、当期純利益60→140億円に上方修正されましたが、これは手持ちの外貨建て預金等に円安によって為替差益が発生しているためです。
任天堂の社長は決算説明会において、来期(2014年3月期)営業利益について1000億円以上を「コミット」すると明言しました。為替等の特殊要因によるものを除いて、達成できなければ経営責任をとるということです。3DS、Wii Uともに、営業利益1000億円以上を達成するためのソフトラインナップが出来つつあるそうです。
もっとも、3DS発売に向けて始動した2010年以来、3年間間違い続けてきた人物の発言ですから、今後の推移を見る必要があります。また、仮に営業利益1000億円が実現できたとしても、為替差益を除くと経常利益は1000~1100億円、当期純利益は600~660億円となるため、PER20倍と割高に評価しても時価総額は約1兆2000億円と、今の時価総額とほぼ同じです。営業利益1000億円は、「買い」とは言えない利益水準と思われます。
任天堂には様々な問題点があります。例えば部材調達です。特殊なROMの調達に失敗したために、3DS用「どうぶつの森」の品不足が今も続いています。重要なビジネスチャンスを失いました。今わかっていることは、任天堂の経営者が最低であと1年間続投するつもりであるということです。
自動車セクター、ダイハツ工業、日野自動車、本田技研工業、デンソー:自動車セクター、特にトヨタグループの好調が確認できました。ダイハツ工業の3Qはエコカー補助金の反動で、営業利益197億円(前年比27%減)と減益でしたが、会社予想よりよい結果となりました。今後もエコカー補助金の反動が少なくなりそうです。また、インドネシアでの生産販売が好調です。通期営業利益は1200→1300億円(前年比13%増)となる見通しです。
日野自動車も好調です。こちらは3Q営業利益141億円(前年比2.7倍)で、国内とインドネシア、タイなどのアジアが好調でした。日野自動車も通期営業利益見通しを530→600億円(60%増)に上方修正しました。
本田技研工業は、3Q営業利益が1319億円(3倍)となりました。北米、アジアの好調に円安メリットが加わりました。北米での販売奨励金も最小限で済んだようです。新型シビック、アコードの成果が出つつあります。通期見通しでは営業利益は変わらず、当期純利益は3750→3700億円と若干下方修正になっていますが、これは為替の予約損があったためです。営業利益の上方修正はありませんでしたが、これは、4輪事業で中国と欧州が減収となったこと、2輪事業でもブラジルが振るわず、インドが先行投資のために利益率が悪化したためです。
自動車部品ではデンソーが好決算を発表しました。3Q営業利益は517億円(3%増)でした。同社も通期営業利益見通しを2250→2400億円(49%増)に上方修正しました。
電子部品セクター、村田製作所、京セラ、TDK:村田製作所は、3Q営業利益が201億円(80%増)と好調でしたが、大手スマートフォンメーカーからの受注が今期分についてはピークアウトした模様であり、通期見通しは営業利益500億円(11%増)で据え置きでした。
一方、京セラ、TDKは通期見通しを下方修正しました。京セラの営業利益は1000→730億円(25%減)、TDKは410→190億円(2%増)になる見込みです。京セラはスマホ等成長分野の比率が低いことが影響していると思われます。TDKは主力製品の磁気ヘッドの需給関係が悪化しているためと思われます。
電子部品はスマートフォンに左右され、スマートフォンは、アップル、サムソンの2強を中国大手のファーウェイなどが追いかける構図になっています。特に韓国勢、中国勢の伸びが大きいようです。このような世界的メーカーと付き合うだけの競争力のある製品(世界シェアトップのチップ積層セラミックコンデンサなど)を持つ村田製作所とと、そうでない京セラ、TDKとでは、セクター全体が伸び悩む中でも、個々の企業の業績トレンドに差がついています。ただし、村田製作所も業績変化率が鈍い中でPERが30倍台と高いため、株価の先行きは慎重に見たほうが良いかもしれません。
決算カレンダー
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表2 主要企業の2013年3月期3Q決算発表予定日
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