米中協議は進展するのか?

2018/08/24

今週の国内株市場ですが、日経平均は23日(木)の取引開始時点で、節目の22,500円や200日移動平均線を意識する水準に位置していて、比較的堅調な展開となっていますが、東証1部の売買代金が2兆円を下回る日が続いており、商い自体は盛り上がっていません。

 

22日から始まった米中の事務レベル協議の動向や、米国で開催されている経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で予定されているパウエルFRB議長の講演などを控え、見極めムードの方が強い印象です。

 

とりわけ、米中協議については、トランプ米大統領が事前に「大きな進展は期待していない」と述べていたほか、今回の協議が閣僚級でなく事務次官レベルで行われていることなどを踏まえると、米中摩擦が改善に向けて大きく前進する見込みは薄いと言えます。

 

とはいえ、23日には米中がお互いに160億ドル相当額の輸入製品に25%の追加関税を発動されるタイミングであることや、膠着感がこのまま続いてしまうと、9月以降、米国による2,000億ドル規模の制裁関税の話が進んでしまいますので、少なくとも本格的な交渉再開への動きが出てきたこと自体は、相場にとって期待材料でなくとも安心材料になっていると言えます。

 

ただし、米中間の摩擦は単なる通商問題ではなく、知的財産権の保護や安全保障が絡んでいるため、いわゆる「落としどころ」をどこに設定するのかという根本的な課題を抱えています。そのため、「長期戦は避けられない」という見方が支配的になっている中、ここに来て急に事務レベル協議の話が持ち上がったというのは、中国側に余裕がなくなり始めているのかもしれません。

 

実際に中国の金融市場に目を向けると、株式市場では、上海総合指数が今週20日の取引時間中に「チャイナショック」時の安値を下回る場面があったほか、為替市場についても、人民元が同様にチャイナショック時の安値水準まで人民元安が進行しています。

 

人民元安については、米中貿易摩擦によるネガティブな影響を為替面でカバーしているという見方が大半ですが、人民元という通貨はIMFSDRの構成通貨に選定されたものの、取引の自由化が進展していないため、まだ国際的な地位と信用を獲得しておらず、人民元の価値と信用はドルを中心とした外貨によって支えられている一面があります。

 

先進国の中央銀行は自国債を準備資産にしていますが、中国の場合、中央銀行(人民銀行)の準備資産は米国債などの外貨準備が占める割合が大きくなっています。例えば、米国への報復として「米国債を売るのでは」という観測がありますが、人民元の価値はドルに依存している面があるため、米国債売り(ドル売り)を行うと、通貨間の信用のバランスをとるために人民元の発行を減らす必要が出てきます。結果的に金融引き締めとなって中国経済に悪影響を与えてしまう恐れがあり、今のところ現実的なシナリオではないと言えます。

 

従って、足元の人民元安は貿易摩擦の影響を緩和させたいという中国当局の思惑がある一方で、過度な人民元安の進行は人民元に対する信用を失いかねない危険性を孕んでいるため、「ある程度の水準で人民元安をキープしたい」という本音が透けて見えます。

 

 

 

 

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