長引く米通商政策への警戒感
今週の国内株市場ですが、日経平均は週初に下落して始まったものの、その後は値を戻す展開が続いています。米国株市場の上昇基調を引き継いでいる格好ですが、ローソク足を見ると陰線が多く、取引時間中は上値が重たくなっています。米国の保護主義的な通商スタンスへの警戒が一服する中、企業決算が手掛かりとなり、下値をジリジリと切り上げている格好です。
主として、米国の保護主義的な通商スタンスによる警戒感は対中国と対EUに分けられますが、直近では両者で動きがあり、それが不安一服につながっているようです。
具体的に見て行きますと、まず挙げられるのが足元で見せている中国株場の落ち着きです。上海総合指数は、米国による追加制裁関税(340億ドル規模)が発動される直前の7月5日に2,733ポイントまで下落しましたが、以降は反発傾向となっています。その背景には、これまで引き締め気味だった金融政策の緩和と、景気刺激策への期待があります。実際に、中国当局は金融面で流動性供給の拡大のほか、インフラ建設を中心とした財政出動の方針と表明しています。
今のところ、国内外の株式市場はこうした中国当局の動きを好感しているようですが、米中の通商交渉がなかなか進展していないことの裏返しでもあります。いわゆる「チャイナショック」時の上海総合指数の安値は2016年1月の2,655ポイントでしたので、最近の株価は何気に当時の水準に迫っていました。このタイミングで中国当局が色々と動き出して来たのは、チャイナショックの再来を避けたいという意図と、毎年7月下旬~8月上旬に行われる「北戴河会議(現政権の指導部と長老らが集まる)」という政治イベントを前にした思惑があると考えられます。
同様に、人民元安も進行しています。人民元の動きをざっくり振り返ると、チャイナショック後につけた安値は2017年1月あたまにつけた1ドル=6.975元でした。これを境にして人民元は元安から元高に切り返し、今年の3月下旬に1ドル=6.254元まで戻しました。これはチャイナショック直前の1ドル=6.214元に迫る水準です。以降は米中の通商摩擦への警戒の高まりに伴って、再び元安傾向に転じるわけですが、足元では1ドル=6.8元台まで元安が進んでいます。
人民元の動きはかなり荒くなっていますが、足元の元安傾向については、「中国当局が通商摩擦の悪影響を為替面でカバーしようと容認している」という見方が多いようです。ただし、海外から投資資金を呼び込みたいことと、ドル建て債務負担の軽減の観点からすると、中国にとっては人民元高の方が好都合です。そのため、思っているほど中国経済に余裕がないかもしれない点は意識しておいた方が良さそうです。
また、今週は米EU首脳会談が開催され、貿易戦争を回避するために交渉を進めることで合意したほか、その間は自動車などへの新たな追加関税を棚上げすることが示唆されました。ひとまず目先の貿易戦争入り不安は一服した格好ですが、この「貿易戦争を回避するために交渉を進める」というやり取りは、3月下旬から4月上旬の米中通商交渉でも見られました。その後の米中間の動向からすると、必ずしも今後の見通しを楽観できる材料ではなく、引続き米国の通商政策スタンスは株式市場の波乱要因として燻り続けそうです。
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