金利の動きが株高の「アキレス腱」になるか?
2018年の国内株市場ですが、日経平均は大発会から大幅上昇を見せました。昨年に上値を抑えてきた節目の23,000円台はもちろん、昨年11月9日の取引時間につけた直近高値(23,382円)をもあっさりと上抜け、幸先の良いスタートとなりました。
こうした株価の上昇は、国内株市場がお休みだった時の米株市場の好調さが挙げられます。公表された米中の経済指標が良好だったほか、昨年末に成立した米税制改革法案などに対する国内外の景気拡大や企業業績の上振れ期待などを背景に、1月2日にはNASDAQ総合指数が初の7,000ポイント台乗せ、翌3日にはS&P500指数が初の2,700ポイント台に乗せ、さらに4日にはNYダウが初の2万5,000ドル台乗せと、主要株価指数が連日で史上初の節目に乗せる勢いと強さでした。国内株市場もこの流れに乗っているような格好です。
ただし、今週に入ってからの日経平均をみると、年初の勢いがいったんストップしているような印象です。「さすがに年初3日間の上昇幅が1,000円を超えていたので多少の下落は当然の動き」と考えるのは自然ですし、週末にはオプション取引やmini先物取引のSQも控えています。今週の下落場面を押し目のチャンスと捉える投資家も多いと思われます。
とはいえ、10日(水)の取引で少し気になる動きが見られました。前晩の米株市場は主要3指数が揃って最高値を更新していたにも関わらず、日経平均が下落したことです。直近の国内株式市場は米株市場に引っ張られてきただけに、逆の動きを見せたわけです。その理由として挙げられるのが、日銀が9日(火)に踏み切った国債買い入れの減額です。国内の長期金利が上昇(債券価格は下落)し、為替市場でも日米金利差の縮小観測で円高が進みました。
その後の各市場の動きは落ち着いていますが、日銀のこの動きがちょっとしたサプライズになった事には留意しておく必要はありそうです。米国をはじめ、欧州などでも金融緩和の出口を探る中、日銀だけは緩和継続スタンスを取っており、市場もそれを織り込んで円キャリートレードなどの取引を行ってきましたが、昨年に黒田総裁が講演でリバーサルレートに言及したあたりから、海外投資家を中心に日銀の金融政策路線変更に対して敏感になりつつあります。
そして10日(水)の国内株市場の動きをみると、取引シェアの高い海外投資家は、米株高の流れで日本株を買うよりも、日銀の動きを受けて日本株買いを手控えた可能性があります。今後の国内株市場は思っている以上に日銀の動きに反応する場面が増えるかもしれません。
また、金利上昇については、日本だけでなく米国の動きも重要になってきます。足元の国内外の株式市場はいわゆる「適温相場」と言われていますが、これは「景気が拡大する中でも、物価上昇が穏やかなため、金融政策も適度になっている」という状況です。とはいえ、景気拡大によって多少の物価上昇(ディマンドプル型)は見込まれますし、最近になって原油などの資源価格が上昇しています。つまり、原材料費が高くなることによる物価上昇(コストプッシュ型)の影響も今後表れはじめる可能性があります。さらに、経済が好調な中で打ち出された減税などのトランプ米大統領の経済政策によって余計に景気を刺激していまい、FRBが利上げのペースを早めざるを得なくなるかもしれません。反対に、米国の経済政策の効果があまり出なくても、財政赤字を嫌気した債券売りによる金利上昇シナリオも想定できます。
適温相場による株高は「金利があまり上がらないこと」が前提になっているため、金利上昇の動きには脆い面があります。その中で、金利上昇の兆候があちこちで表れ始めていることには警戒しておいた方が良いと言えそうです。
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