まだ残っている政治イベント
米大統領選挙の投開票が進み、トランプ氏の勝利となった11月9日の日経平均は前日終値比で919円の大幅下落となりました。翌10日の取引は大きく反発してスタートしましたが、政治イベント(国民規模の投票)を受けて株価が急落するのは、6月24日に英国で行われたEU離脱の是非を問う国民投票以来、今年になって2回目です。
6月の英国、そして今回の米国ともに、事前の大勢を占める予想とは反対の結果になったことが株価急落の引き金になったわけですが、実はまだ注目の政治イベントが残されています。それは12月4日に予定されているイタリアの国民投票です。
この国民投票で問われるのは憲法改正案の賛否です。最大の論点になっているのが「上院の定数削減・権限縮小」になります。具体的には、上院の定数を現在の315議席から3分の1以下の100議席に減らすほか、議員の選出方法も公選ではなく、地方自治体の代表者で構成される任命制に変更し、内閣不信任案の議決権や法案審議権の範囲も制限されるというものです。
イタリアの国会は米国と同じく上院と下院で構成されていますが、両院が持つ権限はほぼ同等で優劣がないという特徴があります。これはかつてファシズムの台頭を許してしまった反省から、権力が集中することを抑えるため第二次大戦後に導入されたものです。
その一方で、権力が分散し、両院で多数派が異なる「ねじれ」状態が恒常化してしまい、政権の樹立や運営維持が困難になったり、法案の審議に時間がかかったりしてしまうという弊害も生じています。実際に、戦後のイタリア政治で5年の任期を全うした政権がなく、イタリア政治の足枷になっている側面もあります。
現在、積極的な構造改革に取り組んでいるレンツィ伊首相にとって、安定的な政権基盤の維持につながる今回の憲法改正は是非とも実現させたい悲願ですが、「首相への権限が強化されるのでは」という警戒や反対意見に根強いものがあり、一部の世論調査では、反対派が優勢となっているものもあります。
レンツィ首相は今回の国民投票で憲法改正案が否決されれば辞任するという発言をしており、結果次第ではイタリアの政治が不安定化し、イタリア経済や欧州経済に悪影響を与え、英国や米国ほどのインパクトはないにせよ、国内外の金融市場がネガティブに反応してしまう可能性もあります。そのため、政治イベントへの警戒はまだ解いてはいけないのかもしれません。
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