「3年以内に危機リスク」が指摘された中国
今週の19日、国際決済銀行(BIS)が、「3年以内に銀行危機に陥るリスクが高まっている」との見解を示しました。中国の信用供与(貸し出し)の伸びが経済規模に比べて異常に高くなっているというのが理由のようです。
経済の規模(GDP)に対する信用供与の規模を比較した指標(credit to GDP gap)では、中国の第1四半期の値が30.1だったのですが、この値が10を上回ると、危機が3年以内に発生するシグナルとされているため、BISが「要注意」と判断したと思われます。ちなみに、中国に次いで値が高かったのはカナダ(12.1)ですが、中国の値がいかに大きいかが分かります。
「中国経済の成長ペースよりも大きい債務の増加ペース」に対する警戒は、このコラムでも以前に紹介したこともあり、最近になって急浮上してきた中国リスクではありません。ただ、ここに来て中国の「カネ回り」を心配する声が増え始めているように感じます。
先週は、中国人民銀行から8月の人民元建て新規融資の状況が公表され、その結果は9,487億元となり、2年ぶりの低水準だった前回(7月の4,636億元)から2倍以上に急拡大しました。低水準に沈んだ前回は「統計上のゆがみのせい」と人民銀行が説明(言い訳?)をしていましたから、融資(信用供与)が持ち直していること自体は、中国経済にとって明るい材料です。とはいえ、個人向け融資が7割以上を占めていることには注意が必要です。個人向け融資の大半は住宅ローンと見られており、住宅価格の下落による不良債権化が心配されます。
また、狭義的なマネーサプライ(M1)の伸びが前年比25.3%である一方、広義的なマネーサプライ(M2)の伸びが前年比11.4%となっていて、両者が乖離していることも注視されています。一部では「中国が流動性の罠」にハマっているのではないか?」という見方があります。流動性の罠に引っかかると、中銀がいくら資金を供給しても企業の投資が伸びにくくなります。
両者が乖離する傾向は昨年10月から顕著になってきていますが、昨年8月にチャイナ・ショックが発生し、当局があらゆる対応策を講じて市場が落ち着きを取り戻した時期でもあります。金融緩和も当局が実施した対応策のひとつで、大量のマネーが供給されましたが、M1に比べてM2の伸びが小さいのは、企業が事業投資を手控えて現金保有しているか、債務返済に充てているなど、実体経済へのマネー流入が活発でない可能性があります。
最近は市場の混乱を招く中国発の材料はすっかり息を潜めていますが、10月の中国は人民元がIMFのSDR(特別引き出し権)の構成通貨入りする予定であるほか、国慶節の連休が控えるなど、中国に注目が比較的集まりやすい時期に差し掛かるため、「カネ回り」を中心に警戒しておく必要がありそうです。
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