中国の「鬼城」を笑えない国内の不動産投資
「ジャクソンホール(イエレンFRB議長の講演)」や「米雇用統計」というイベントを通過して迎えた今週の国内株市場ですが、日経平均は5月以来、久々に17,000円台を回復してきました。9月は日米の金融政策会合が同じ日程(20日〜21日)で予定されていますが、特に、日銀の金融政策決定会合については、これまでの金融政策に対して「総括的な検証」が行われることになっており、足元では様々な憶測やシナリオを想定する動きが見られます。
そんな中、今年4-6月期の銀行や信用金庫による不動産向け融資の新規貸出額が前年同期比22%増の3兆1,271億円に達したとの報道がありました。この規模はバブル期だった1989年の記録(2兆7,679億円)を27年ぶりに更新したことになります。この背景には、「総括的な検証」の対象になると思われる、日銀が今年2月に導入したマイナス金利政策の影響が大きいと言われています。マイナス金利によって、借入れ金利が低下したことや、運用難となった資金が不動産市場に流れたという構図です。
不動産市場の資金ニーズとしては、東京五輪に向けたインフラ開発・整備や、不動産投資信託(REIT)への投資、そして賃貸住宅建設向けが挙げられます。ちなみに、「節税対策のために…」という切り口で不動産業者からの勧誘電話を受けたことがある方もいらっしゃるかと思われますが、賃貸住宅を建てた土地は相続税の評価額が下がります。
こうした不動産市場への資金流入は別の統計にも表れています。全体の経済成長率が横ばいだった今年4-6月期国GDPですが、うち、不動産投資は前期比で5%増と高い伸びになっています。これは、東日本大震災後の復興時(2011年7-9月期)の伸び率(5.5%増)に近いです。
マイナス金利導入によって不動産投資が増えたこと自体は悪くないかもしれませんが、個人が住宅を購入するというよりも、節税目的の賃貸住宅建設ばかりが増えていたとすると、中長期的に問題が発生する可能性があります。銀行から資金を借りた家主は、建設した賃貸住宅からの家賃収入によって借入金を返済していくことになりますが、賃貸住宅が供給過剰になってしまうと、入居者が入らず、家賃収入も減り、返済が滞って不良債権化するリスクがあります。日本の人口は減少傾向です。
よくTVなどで、中国不動産バブルの象徴として「鬼城(ゴーストタウン)」の映像が流れることがありますが、需要が見込めないのに供給ばかりが先行した結果という点では日本の状況も決して笑えないのかもしれません。
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