深まる日中対立、日本経済への波紋

2025/11/21

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◆国会答弁を巡り高まる緊張

高市首相の台湾有事に関する国会答弁や、それに対する中国の薛剣・駐大阪総領事のSNSへの投稿を巡り、日中間の緊張が高まっています。これまでのところ、中国政府は日本政府に対する強硬な姿勢を崩しておらず、対立が一段と深刻化する可能性も高まっています。今後の日本経済への影響が心配されます。

◆堅調なインバウンド消費に影響

日中対立が一段と深刻化した場合、日本経済への直接的な影響としては、まずインバウンド消費の減少が考えられます。

中国政府は、すでに中国国民に日本への渡航自粛を要請していますが、中国からの訪日客減少が日本経済に大きな影響を与えうることは言うまでもありません。中国からの訪日客数は全体の2割程度(2024年)を占める上、一人当たり旅行支出額も、全体平均を2割程度上回っています【図1】。また、旅行消費に占める買い物代の割合が高いという特徴もあります【図2】。そのため、中国からの訪日客数の減少は、日本各地の観光需要の減少のほか、百貨店などの売上高にもマイナスの影響を及ぼす可能性が考えられます。

◆水産物輸出の輸入再停止も

また、19日には、中国政府は日本産水産物の輸入の事実上の停止を日本政府に通知しました。公式には提出資料の不備が理由とされていますが、今後、影響の長期化も懸念されます。

この輸入停止措置は、東京電力福島第1原子力発電所の処理水の放出を理由に2023年8月に取られた措置で、2025年6月に再開が発表されたばかりでした。中国は、同措置が取られる前の2022年時点で、対象とされる品目の輸出総額の2割強を占める主要輸出先であったため、禁輸措置導入後、それらの品目の輸出量は大幅に減少しています【図3】。今回の措置は、今後の輸出量の回復への期待に水を差す形になりました。

◆望まれる早期の解決

インバウンド消費や水産物の輸出自体は、堅調な中国以外の訪日客の増加や、これまでの水産物の輸出先多様化の取り組みなどにより、影響が緩和される面もあるでしょう。ただ、今後の帰趨によっては、影響はこれらにとどまらず、中国からのレアアースの輸出制限など、より広範に影響が及ぶことも懸念されます。

もとより、2026年に向けて世界経済は不透明感が高い状況です。日中双方の経済にとって一段の悪材料となる前に、早期の解決が望まれます。

(シニアエコノミスト 藤本 啓)

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