「トランプ政権2.0」の関税政策

2025/01/17

今週の株式市場ですが、これまでのところ、日米ともに軟調な推移から持ち直すような動きとなっています。

米金利の高止まりが株式市場の重石となる中、米インフレ指標(12月分の生産者物価指数と消費者物価指数)の動向が注目されていましたが、両者ともにインフレの進行が落ち着く結果となったことで、米消費者物価指数が公表された15日(水)の米国株市場では、主要株価指数(NYダウ・S&P500・ナスダック総合指数)が揃って大きく反発、それを受けた16日(木)の日本株市場も日経平均が反発しています。

また、15日(水)の米国株市場では、大手金融機関のゴールドマン・サックスの予想を上回る決算を好感する動きや、中東パレスチナ自治区ガザ地域での戦闘停止が合意された安心感も市場のムードを好転させた格好です。

ただし、株価が反発したとはいえ、米主要株価指数はまだ50日移動平均線が意識される水準ですし、日経平均も39,000円台を回復できておらず、必ずしも先高観が高まったとは言えない状況です。やはり、来週20日(月)に正式に発足するトランプ新政権への警戒感が影響していると思われます。

そのトランプ新政権ですが、足元では関税政策への注目度が急上昇しています。その背景として、先週にトランプ氏が関税導入プロセスを迅速化する「国家経済緊急事態(IPEEA)」の宣言を検討していると報じられたことや、今週も「対外歳入庁(ERS)」の新設が発表されるなど、関税政策の意欲を示す動きが目立っていることが挙げられます。

ちょっと細かい話になりますが、関税の導入や実施については、米大統領に発動権限が与えられる法的な根拠がいくつか存在しています。具体的には、前トランプ政権時に実施した関税政策は、鉄鋼・アルミニウムに対するものは「通商拡大法232条」、中国製品を対象とするものについては「通商法301条」が法的な根拠となりました。

いずれも、大統領の指示を受けた米商務省や米通商代表部(USTR)が、関税実施の条件を満たせるかについて調査を行いますが、数カ月単位の時間が必要となり、当時はトランプ氏の大統領就任から実際に関税が賦課されるまでに、それぞれ1年2カ月、1年6カ月かかりました。

今回のトランプ新政権も同様のプロセスを経るのであれば、関税実施までに時間的猶予があるため、関税の準備を進めつつ、それまでに外交やその他の政策に着手するのではという見方もあったのですが、ここに来て、調査期間を必要としないIPEEAが検討されていることが判明し、関税政策のスケジュール感が早まることも想定しておく必要が出てきました。

もちろん、トランプ氏の関税政策については、「あくまでも譲歩を引き出すディールを優先させたもの」という見方もありますが、関税実施の意欲や本気度が強まる中、20日(月)の就任演説で同氏が何を語るのか、その内容次第でマーケットが大きく動き出す可能性があるだけに、世界中が見守ることになります。

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