『中国の金融刺激策から見える「本気度」と「ホンネ」』

2024/09/27

9月相場の「ヤマ場」だったとも言える日米の金融政策イベントが通過しましたが、株式市場の反応は好調さを維持しています。米国株市場では、NYダウやS&P500が最高値圏に位置しているほか、国内株市場でも日経平均が節目の38,000円台以上での値固め定着にトライしつつある状況です。

そして、今週は日米だけでなく、中国からも金融緩和策が打ち出され、上海総合指数や香港ハンセン指数といった中国関連の株価指数が大きく上昇していることも注目されています。

実際に、今週24日(火)に打ち出された中国の金融緩和策の詳細を見てみると、短期金利や預金準備率の引き下げをはじめ、企業向けの優遇貸出金利の引き下げなど、金融市場に直接働きかけるものだけでなく、不動産市場支援策(住宅ローン金利の引き下げや、2軒目以降の住宅購入時に必要な頭金の比率を引き下げ、在庫住宅を購入する際の支援拡大など)のほか、株式市場対策(証券会社および政府系ファンド、保険会社が資産担保を通じて人民銀行から流動性を獲得できるようにしたり、上場企業の自社株買い戻しや大株主の保有額拡大のための資金調達を支援するなど)も盛り込まれ、守備範囲が幅広く、そして政策の手数も多いのが特徴です。

また、今回の金融緩和策は、人民銀行と中国証券監督管理委員会(CSRC)、国家金融監督管理総局(NFRA)の担当者が揃って記者会見を行うという、異例の形式で公表されたこともあり、中国当局の「本気度」がうかがえます。

逆を言えば、それだけ「年5%前後」の経済成長率の目標達成が難しくなっているのかもしれません。9月14日に発表された8月分の中国の経済指標は、工業生産や小売売上高の伸びが鈍化したほか、新規の貸出残高も予想を下回るなど減速感が滲み出ています。

先ほども述べた通り、中国株市場は今のところは堅調です。足元の株価上昇によって、香港ハンセン指数の年初来からのパフォーマンスは、25日(木)時点で日本のTOPIXや米国のNYダウを上回っています。

では、中国の株式市場や中国経済が今回の金融緩和策で息を吹き返せるかについては微妙なところです。確かに、政策全体としてはそれなりの規模感で、内容も多岐にわたっていますが、中国経済減速の要因とされる不動産価格や不良債権について、まだ処理や対応が進んでいない状況下での金融緩和の効力は限定的にとどまり、景気を刺激するために財政面での取り組みが求められる可能性があります。

ただし、中国は2008年から2009年にかけての世界的な金融危機の時に、4兆元規模の財政出動による景気刺激策を講じ、驚異的なペースで経済が持ち直したものの、それ以上の過剰生産設備や地方政府の債務などを生み出し、現在まで尾を引く問題につながったという経験があるだけに、中国の中央政府が再度の大型刺激策を打ち出すにはかなり高いハードルがあると思われます。

そのため、「財政出動のやりにくさが今回の比較的規模の大きな金融緩和策につながった」というのが中国当局の「ホンネ」かもしれません。であるならば、中国経済の先行きについて慎重にならざるを得ない状況はまだしばらく続きそうです。

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