株価の「時間調整」と「値幅調整」

2023/12/01

今週の株式市場ですが、これまでのところ、日経平均がひとまず年初来高値をうかがう動きが一服し、節目の33,000円台をキープしつつも、株価のもみ合いとなっています。

こうした足元の株価の値動きをテクニカル分析的に捉えると、日経平均が6月19日と7月3日につけた取引時間中の高値どうしを結んだ「上値ライン」を挟んで推移しているように見えます。

この上値ラインは、9月15日に高値をつけた時に抵抗として機能し、その後の株価が大きく下落して行ったのですが、今回については、株価のトレンドが下落に転じることなく、ライン上での攻防が11月の半ばから2週間ほど続いている格好です。

確かに、途中で年初来高値を超える見せる場面はあるものの、上抜けきれない足元の状況は、ちょっともどかしいですが、恐らく株価の「時間調整」の局面にあると思われます。

株価の調整には、足元の「時間調整」と、「値幅調整」の2つがあります。日経平均は9月から10月にかけての下落幅が2,900円を超え、11月の上昇幅が約3,300円となっており、9月~11月の3カ月間は株価が大きく動く「値幅調整」をこなしてきたと言えます。

現在は、値幅調整後のタイミングであること、11月からの株価急上昇によって、買いのエネルギーをかなり消耗しているため、さらに上昇していくには、「買い戻しによる株価上昇」から、「先高観による買い騰がり」の材料が必要であること、そして、株価の下値については、売り込まれるほど景況感の状況は悪くなっていないことなどを踏まえると、時間調整の局面を迎えていること自体は自然な流れなのかもしれません。

となると、「今回の時間調整がいつまで続くのか?」が気になるところです。結論から言ってしまうと、もうそろそろ株価が動き出す可能性があります。

時間調整の背景には、「相場を動かしそうなイベントや材料が控えているための様子見」や、「方向感のない値動きを続けることで、チャートの状況が変わるのを待っている」などが挙げられます。

前者については、来週末の10日が米11月雇用統計、その翌週12日~13日には米FOMCが予定されています。また、国内では10日がメジャーSQ日となり、需給的な思惑も絡んできます。

後者については、株価と移動平均線との距離感が注目されます。現在の日経平均は、25日・75日移動平均線から上方向に乖離が進んでいる状況ですが、25日前の日経平均は31,000円水準、75日前が32,000円水準と、現在の株価水準よりも低いため、2つの移動平均線はしばらくのあいだは上昇基調を描いていきます。時間調整を続けることで、株価が横ばいであっても、移動平均線との距離は着実に縮んでいくことになります。

足元の株価が上値ラインで攻防戦を繰り広げていることは、売りに押されながらも上値への意欲の強さを保っていると見ることができ、そろそろ時間調整が終わり、来週以降に大きく動くことが予想されます。12月相場に入りましたが、年末に向けて株高が継続するのか、それとも軟調に転じるのかの大事な分岐点を近く迎えることになりそうです。

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